
蒸し暑い夏は、人間だけでなく猫も体調を崩しやすくなります。
特に気をつけたいのが「脱水症状」です。
快適な室内で暮らす猫でも、暑さや水分不足から体調を崩してしまうことがあります。
猫はもともとあまり水を飲まない動物ですが、健康のためには飼い主さんの工夫がとても大切です。
この記事では、猫の脱水症状のサインやリスクから夏におすすめの水分補給の工夫まで、愛猫の健康を守るためのポイントを詳しくご紹介します。
猫の脱水症状とは?サインとリスク

猫の脱水症状とは、体内の水分と電解質のバランスが崩れ、身体機能に支障をきたす状態を指します。
脱水が進むと腎臓や心臓などに負担がかかるといわれ、深刻な事態を招くことも。
異変に早く気づくためには、日ごろから愛猫の様子をよく観察することが大切です。
猫の脱水の主な症状
猫の脱水症状では、尿の色が濃くなったりトイレに行く回数が減ったりなど、排泄の変化が見られるといわれています。健康な猫の尿は淡い黄色ですが、脱水状態が続くと濃いオレンジ色に近くなることもあります。
「食欲が落ちる・元気がなくなる・遊ばなくなる」といった行動の変化にも注意が必要です。
また、皮膚をそっとつまんでみて、すぐに戻らないのも脱水のサインの1つ。
これは「皮膚ツルゴールテスト」と呼ばれ、水分が足りていないと皮膚が弾力を失い、戻りが遅くなります。
<参照>
【猫の脱水症状】確認方法や原因と対策などを獣医師が解説!
猫の脱水症状の予防法
猫の脱水症状を防ぐには、まず日常的に水をしっかり飲んでもらう工夫が大切です。静止した水にあまり興味を示さない猫の場合は、循環式の給水器や蛇口を使うと飲水量が増えることがあります。
複数の場所に、タイプの異なる水飲み場を設置するのも効果的です。
また、夏には室温の管理も欠かせません。
日差しの強い時間帯は室温が急上昇するので、エアコンを使って猫にとって快適な室温である25〜28℃に保つようにしましょう。
直射日光を避けるため、カーテンや遮光ネットを使うのも効果的です。
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猫の脱水症状の対処法
脱水のサインに気づいたら、まずは水分補給を優先しましょう。シリンジで少量ずつ飲ませる方法もありますが、猫にストレスを与えないよう注意が必要です。
ウェットフードや液体おやつなどで水分がとれるように工夫してみてください。
脱水が進行している場合は、早めに動物病院を受診することが何よりも大切です。
特に、「ぐったりしている・嘔吐や下痢を繰り返している・自分で水を飲もうとしない」といった状態は、すぐに獣医師の判断を仰ぎましょう。
点滴が必要なケースもあり、早期の対応が命を救うことにつながります。
猫に必要な水分量は?体重あたりの目安も紹介

猫に必要な水分量の目安は、体重1kgあたり50ml程度といわれています。
つまり、体重5kgの猫であれば1日あたり約250mlの水分が必要です。
ただしこれは目安で、気温・湿度・食事内容によっても必要量は変わります。
ドライフード中心の食生活では、飲み水でしっかり補わなければなりません。
一方、ウェットフードには約70〜80%の水分が含まれており、自然と水分が摂取できます。
食事スタイル・体調・季節に合わせて、適切な水分補給をサポートしてあげましょう。
夏におすすめの猫の水分補給の方法

暑い夏は、しっかりと愛猫に水を飲んで欲しいものですね。
しかし、水を飲みたがらない猫も多いので、「思わず飲みたくなる」ような工夫が必要です。
筆者が猫との暮らしで実践している例を交えながら、おすすめの方法をご紹介します。
新鮮な水を用意する
猫にとっても、水は鮮度が命です。ぬるくなったり食べカスやホコリが入ったりして汚れた水では、猫も飲みたくなくなります。
朝と夜の2回、真夏にはできれば昼間にも交換すると良いでしょう。
循環式のフィルター付き給水器なら、水をきれいに保てるだけでなく、流れる音が猫の興味をひき、飲水を促してくれます。
常に適正量のきれいな水が供給されるので、多頭飼いや留守番が多いご家庭にもおすすめです。
水飲み場を複数にする
水飲み場は、1つではなく複数設けるのが理想的です。たとえば、リビング・廊下・寝室などに1つずつ置いておくと、猫が水を飲みやすくなります。
トイレやごはん皿のすぐ横は嫌がることもあるので、少し距離を置いて設置しましょう。
ペットドアを利用すると、家の中を自由に移動することができて便利です。
ちなみに、筆者宅の猫はかなりのこだわり派です。
朝は浴室の洗面器で飲み、昼はリビングのお椀、夜は洗面所の蛇口からと、時間帯によって飲み場を使い分けています。
好みの容器を使う
水の器ひとつで飲水量が変わることもあります。猫によっては陶器が好きだったり、金属の器を嫌がったりと好みに差があるようです。
試しに数種類を置いて、どれに1番興味を示すか観察してみましょう。
筆者宅の猫は、子ども用のキャラクター付きお椀を気に入っています。
さらに、甘えたい時は私の手のひらに水をためて飲みたがるという、ちょっと面倒だけど愛おしいクセもあります。
気まぐれな猫だからこそ、飼い主さんの柔軟な対応がカギとなるでしょう。
食べ物から摂取する
水を飲みたがらない猫には、ウェットフードやスープ仕立てのごはんが役に立ちます。水分の多いペースト状の総合栄養食などを活用することで、自然に水分補給ができます。
猫用の水分補給スープや液体おやつも多く市販されています。
ただし、与えすぎには注意が必要です。
味や匂いの強いタイプは体に負担となるものもあるため、成分表示を確認したうえで与えるようにしましょう。
日々の食事に少しずつ取り入れるのがおすすめです。
好みの水温にする
猫にも、飲み水の温度に好みがあります。常温を好む猫もいれば、ぬるま湯を好んだり、冷たい水を飲みたがったりと違いがあるようです。
暑い夏には、氷を1〜2個入れてみると、猫が興味を持って近づいてくれることがあります。
愛猫が前足で氷をちょいちょいと触りながら、水に口をつけてくれるかもしれません。
季節や体調に合わせて水温を調節し、飲みやすさと楽しさを兼ね備えた工夫で飲水習慣をサポートしましょう。
【まとめ】猫も夏は水分補給が大事!

飼い主さんが意識して水分補給を促すことが、愛猫の健康を守るうえでとても大切です。
新鮮でおいしい水を用意し、好みに合わせた飲み場や器を選び、暑さ対策をしながら適切に水分をとれる工夫をしましょう。
猫は体の不調を隠す習性があるため、脱水症状も見逃されがちです。
水分補給だけでなく、日ごろの観察と信頼関係があってこそ、異変に早く気づけるようになります。
暑い夏を愛猫と元気に過ごすために、できることから始めてみましょう。
この記事を書いたペットとの暮らしの専門家

永楽陽子
大学院卒業後、予防医学に関する研究や環境分析に取り組む。元動物病院勤務。(ミックス/男の子)