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【専門家監修】寝たきり老犬の水の飲ませ方|安全に飲ませる方法や脱水対策

年齢や病気の影響で寝たきりになった愛犬に水を飲ませるにはどうすればいいのか?

不安を感じている飼い主さんは多いのではないでしょうか?

とくに、気温が上がってくる季節は熱中症や脱水を防ぐためにも水分補給が重要になります。

この記事では、認定動物看護師の資格をもつ筆者が「寝たきりの老犬に安全に水分を飲ませる方法・脱水対策」「寝たきりの犬でも水分摂取が必要な理由」などについてわかりやすく解説します。

寝たきりの老犬でも水分摂取が必要な理由

寝たきりの老犬でも水分摂取が必要な理由
寝たきりでほとんど動いていない老犬でも、生命維持のために水分は必要です。ここでは寝たきりの老犬でも水分摂取が必要な理由をまとめました。

水分は血液循環・体温調整・消化を支える「生命維持の要」

水は体内の約60%を占める重要な成分です。水分を補わないとそもそも生き物は生きて行けません。

日常での動きが少ない寝たきりの老犬でも、体内の水分は排泄物や汗・涙・唾液などから常に身体の外に出ています。

水分がなければ、血液の循環も栄養の消化吸収もできなくなります。

また、老犬は体温調節機能が低下しているため、水分不足で熱中症になるリスクが高いです。水分をしっかり摂ることで血液の循環量も増えるため、体内の熱を外に逃がすことができます。

老犬の体は水分バランスが崩れやすい

犬は年齢を重ねると体内の水分量が減り、のどの渇きにも鈍感になる傾向があります。

また、腎臓や心臓の機能も弱くなり、水分の保持や排出のバランスが崩れやすいです。

その結果、少しの脱水でも体調を崩しやすい状態になります。

脱水はさまざまな不調や病気の引き金になる

脱水状態になると、犬の身体に以下のようなさまざまな不調が表れ始めます。
 
【脱水により表れる身体の不調】
  • 腎臓・消化機能への影響
  • 食欲不振
  • 元気消失
  • 皮膚のハリがなくなる
  • 目が落ちくぼむ
  • まぶたが垂れてくる

脱水が重症になると、意識障害や腎不全のリスクも高まるでしょう。

日ごろから水を飲ませて脱水対策を行なうことで、不調や病気を未然に防げます。

寝たきり老犬の水の飲ませ方

寝たきり老犬の水の飲ませ方
ここでは、寝たきりの老犬に水を飲ませる方法をまとめました。

シリンジやスポイトで口に水を含ませる

愛犬が自分で水を飲み込める場合は、シリンジやスポイトを使って水を飲ませる方法がおすすめです。

シリンジやスポイトは100円ショップに売っている場合もあるため、手軽に試しやすいでしょう。

シリンジやスポイトを使う場合は、口から水が溢れないように少量ずつ口に含ませてあげてください。

また、愛犬の正面からではなく、頬側の口唇をめくって歯茎にシリンジやスポイトの先端をそっと添えるようにしてあげてください。

愛犬が苦しそうにしていないか?よく観察しながら行いましょう。

ウェットフードやスープ状のフードを与える

水分の多いウェットフードやスープ状のフードは、水分摂取の方法としてよく使われます。

シリンジやスポイトだけで水を飲ませるのは量が不十分になることもあるため、ごはんからも水分を摂らせてあげるといいでしょう。

水分量の多いフードを寝たきりの老犬に与えるときは、カテーテル用シリンジがおすすめです。シリンジの先端が広い給餌・給水用のシリンジで、動物病院でもよく使われています。

寝たきりの老犬は、水分摂取やシリンジによる給餌のときには“体勢”が重要です。寝かせたままの状態では、のどに詰まったり誤嚥をしたりする危険があります。体勢に関しては後の項で説明します。
 
【おすすめの給水・給餌用シリンジを紹介】
ジェントルフィーダー50G
ジェントルフィーダー50G

(画像引用元:ファンタジーワールド オールペット用注射器型フィーダー ジェントルフィーダー

獣医師やブリーダー、ドッグトレーナーなども推奨するシリンジです。先端がニップルタイプ・テーパータイプの2種類あり、用途によって使い分けられます。

ピルガン25G
ピルガン25G

主に投薬用として使われるピルガンですが、水を少量ずつ与えたいときにも便利に使えます。薬をなかなか飲んでくれない子や投薬にいつも苦戦する子に、投薬と給水の両場面で使えるためおすすめです。

ニプロ カテーテル用シリンジ 50mL
ニプロ カテーテル用シリンジ 50mL

動物病院で頻繁に使われるカテーテル用シリンジです。缶詰・ふやかしたごはん・ウェットフード・スープ状のフードなどを詰めて給餌用に使ったり、水を飲ませるときに使ったりします。

握りやすいサイズ感で、中も広く洗いやすいため、使いやすいです。

はちみつの空き容器
はちみつの空き容器

はちみつの空き容器もシリンジ代わりに使えます。シリンジよりも先端が広く容量も大きいです。微調整が少し難しいため、使うなら大型犬の子がいいでしょう。

ごはんに水分を混ぜる

ウェットフードやスープ状のフード以外にも、いつものごはんに水分を混ぜる方法もおすすめです。

寝たきりの老犬はごはんを噛む力が低下傾向にあるため、ドライフードやセミモイストフードに水を混ぜて温めてふやかしてあげるといいでしょう。

温めてふやかしたごはんは、指で触って人肌くらいに冷めたのを確認してから少しずつ愛犬にあげてください。

手を使って飲ませる・手で口のまわりに水を付ける

シリンジやスポイトが口に当たるのを嫌がる子でも、手からあげれば水を飲む子もいます。

また、身体が辛くて水を飲みすらしない子でも、口まわりに水を少し付けてあげれば反射でペロッと舐める場合があります。

口に水が少しでも含まれれば水を飲む気が起きることがあるため、愛犬の様子を見ながらぜひ試してみてください。

寝たきりの老犬に水を飲ませるときの注意点

寝たきりの老犬に水を飲ませるときの注意点
寝たきりの老犬に水を飲ませるときには、さまざまなリスクに注意を払う必要があります。

誤嚥や窒息のリスクに注意

シリンジなどで飲ませる場合、勢いよく口に水を含ませるのは危険です。焦らず、ゆっくりと与えていきましょう。

犬の身体の状態や体格などによって、水を飲み込める量やスピードは異なります。飲み込んだことを確認しながら、少しずつ水を口に入れていきましょう。シリンジを使うなら、小さい1メモリ分くらいずつ与えるのがおすすめです。

寝かせたままで給餌・給水はNG

寝たきりの犬に給餌・給水を行なうときは、寝かせたままの体勢で行なうと危険です。のどに詰まったり誤嚥を起こしたりするリスクがあります。

寝たきりの老犬に水やごはんをあげるときは、上体を起こして頭を高くキープできる姿勢にしてあげましょう。以下の画像のような姿勢が理想です。
GREEN DOG&CAT 獣医師が解説!シニア犬の食事 ~シニア犬の食事介助の基本と、具体的なやり方について~
(画像引用:GREEN DOG&CAT 獣医師が解説!シニア犬の食事 ~シニア犬の食事介助の基本と、具体的なやり方について~

クッションやタオルなどを使ってあげると、飼い主さんも愛犬も身体への負担を軽減できます。

愛犬が自分で伏せの姿勢がとれそうであれば、伏せさせて水やごはんを少量ずつあげてみてください。

また、寝たきりの老犬の介護では水やごはんが床にこぼれることが増えるでしょう。

ホームタイル
ホームタイルは、汚れた部分だけを剥がして自宅で洗える便利なカーペットです。愛犬の介護の負担を少しでも減らすために、気になる方はぜひチェックしてみてください。

過剰な水分摂取は逆効果

水分を摂っていないとつい心配になってたくさん飲ませようとしてしまいますが、水は「たくさん飲めばいい」というものではありません。

とくに老犬は若い頃よりも腎臓の機能が低下傾向にあります。

腎機能が低下傾向にある犬が水分を過剰に摂取すると、水分や塩分のバランスを整える・神経や筋肉を正常に機能させる「電解質」という物質のバランスが崩れやすく、健康に害を及ぼす場合があるのです。

心配になってついたくさん水分を摂らせたくなりますが、過剰な水分摂取は避けましょう。寝たきりの老犬の基本的な水分量は後ほど説明します。

尿量が増えることに対する注意点

尿量が増える=頻尿になったり1日の尿量が極端に増加したり、排尿のコントロールが効かなくなったりしやすいです。

寝たきりで動けない犬は、おむつの中で排尿をする子もいるでしょう。大量の尿がおむつに溜まると、以下のような問題が起こる可能性があります。
  • おむつ交換の手間が増える
  • 交換できない場合におむつから尿が漏れる
  • 常に尿で湿ったおむつを履いているため、蒸れてかぶれやすくなる

尿量が極端に増えすぎないためにも、適切な水分摂取量をキープしてあげることが大切です。

また、おむつを付けている子はおむつをこまめにチェックして交換してあげましょう。

そのほか、少しかわいそうではありますが尿カテーテルを入れてあげるのも一つの方法としてあります。尿カテーテルが入っていれば、尿はカテーテルを通って袋に溜まっていくため、尿でおむつが蒸れたり尿が漏れたりする心配がほとんどありません。

ただし、絡まったり抜けたりする心配もあるため、動物病院で相談してみましょう。

老犬に適切な水分量と管理方法

老犬に適切な水分量と管理方法
犬は、年齢や普段の運動量などによって適切な水分量が異なります。

ここでは、寝たきりの老犬に適切な水分量とその管理方法についてまとめました。

老犬が1日に必要な水分量の計算方法

老犬が1日に必要な水分量は、体重1kgあたり50〜70mlが目安です。

例えば、体重6kgの犬なら1日に300ml〜420mlの水分摂取が基本になります。

水分の管理方法

必要な水分量がわかっても「今日はあと何ml飲ませたらいいのか」管理をするのが難しい場合もあるでしょう。

そんなときは、目で見てわかりやすく水分を管理する方法があります。

例えば以下のような方法はいかがでしょうか?
  • 今日1日で飲ませたい量の水をペットボトルにあらかじめ入れておく
  • 1日に必要な水分をいくつかのシリンジに分けて入れておき、決まった時間に一本ずつ与えていく

あくまで例のため、飼い主さんが管理しやすい方法をぜひ見つけてみてください。

また「絶対に決まった量を与えなきゃいけない」「少しでも多かったり少なかったりしたらいけない」と厳しく管理すると飼い主さんも愛犬も苦しくなってしまいます。

1日に必要な水分量はあくまで目安であるため、無理しすぎずできる範囲で管理をしてあげましょう。

「何をしても水を飲まない...」というときの対処法

「何をしても水を飲まない...」というときの対処法
老犬は、体力がなくて水を飲むことすら嫌がったり、のどの渇きを感じにくくなっていたりすると、何をしても水を飲まないことがあります。

そんな場合の対処法をまとめました。

こんなときは動物病院へ

  • 24時間以上水を飲んでいない
  • ぐったりしている
  • 尿量が極端に少ない

上記のような状態が見られたら、腎機能の低下脱水など身体の中に異変が起きている可能性があります。

おかしいと思ったら、まずはできるだけ落ち着いて、早めに動物病院に連れていきましょう。

点滴や皮下補液という選択もある

点滴や皮下補液は、動物病院で勧められることが多い方法です。

脱水状態にあったり口から水分を摂れなかったりする場合に、針で身体に直接水分を補っていきます。

また、動物病院によっては自宅で皮下点滴を勧められることもあるでしょう。血管に直接点滴を打つ静脈点滴は原則動物病院にて行いますが、皮下点滴はおうちでもできます。

しかし、犬の性格が大人しい・打つ人と愛犬が動かないようにおさえる人の2人態勢で点滴ができる・飼い主さんが怖がらずに愛犬の背中の皮膚に針を挿入できるなど、各病院によって自宅点滴が許可される条件があるでしょう。

動物病院で慎重に相談のうえ、どのようにするかを決めていきましょう。

寝たきりの老犬が水を飲めなくても焦らず一つ一つ方法を試してみよう

寝たきりの老犬に水を飲ませてあげたいけれど、どうやってあげたらいいのか?不安な飼い主さんは多いでしょう。

水をなかなか飲み込めなかったり、水分を摂らせてもらうことを嫌がったりすると、脱水症状に陥る心配もあるはずです。

それぞれの身体の状態や性格によって合う水の飲ませ方はさまざまです。まずは焦らず、試せる方法からやってみましょう。

また、不安な時や困った時こそ、専門的な知識や経験のある動物病院のスタッフを頼ってみてください。水の飲ませ方や自宅でのケア方法など、愛犬にあった方法を一緒に見つけてくれるはずです。

愛犬を大切に想う飼い主さんが寝たきりの愛犬の介護に少しでも不安を和らげて向き合えるよう、この記事が参考になれば幸いです。

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