愛犬・愛猫との暮らしには、病気やケガなど不安になることも起こってきます。そこで今回は、動物病院の代表を務める上條先生に、飼い主さんの
疑問やお悩みをお聞きしました。 取材・文/三浦香代子
上條圭司先生
ゼファー動物病院代表。麻布大学卒。小学生の時に『犬の飼い方』(増井光子著)という本を読み、獣医師を志す。開業30年以上が経つ今も初心を忘れず、ペットが家族の一員として長生きできるようサポートをしている。
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床と段差
Q1 家の床材で気をつけることはありますか?
A1 犬は滑りやすい床、猫は冷えやすい床を避けて犬はフローリングなど、滑りやすい床は避けましょう。足が滑ると膝蓋骨脱臼や関節炎の心配があります。
猫はカーペットなどの素材だと床で爪とぎをしますから、爪が引っかかりにくい素材か、別に爪とぎ場をつくってあげるといいですね。猫は暑さにはわりと強いのですが、冬の冷気、エアコン・扇風機の冷風が直接当たるような床は苦手。その場合はタオルケットやキャットハウスなど身を隠せる場所を用意してあげましょう。
Tips!!
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Q2 家の中に段差があるとケガをしやすくなりますか?
A2 犬は急な段差に注意。猫は固い床への着地に注意特に心配なのは犬の方です。今までソファやベッドに飛び乗っていたのにジャンプしなくなった場合は、どこかに痛みが出ているかもしれません。特にミニチュアダックスフントは、急な階段の上り下りで椎間板ヘルニアになる恐れがあるといわれています。
猫も高齢になると今まで上がっていた場所に上れなくなったり、下りるのを躊躇することがあります。こんな時はどこかに関節炎などが隠れている場合があるので注意が必要です。
猫は多少の段差はそれほど心配ありませんが、飛び降りた場所がタイルやコンクリートなど固い場所だとケガをするケースも。猫が飛び降りそうな場所にマットを敷いてあげるといいでしょう。
室内環境
Q3 近年、地球温暖化の影響もあって、寒暖差が激しくなっています。ペットには、どんな影響がありますか。
A3 熱中症や消化器、呼吸器の病気が懸念されます。1年通じて快適な温熱環境にしましょう急激な温度変化の場合、ストレスによる消化器症状(食欲低下、下痢、嘔吐など)が懸念されます。
暑すぎる環境ではそれに加えて熱中症、寒すぎる環境では呼吸器疾患(くしゃみ、鼻水、咳などの風邪のような症状)や、真冬の屋外など極端に寒ければ低体温症(熱中症の逆)が起こりえます。特に体力のない子犬・子猫や老齢の犬・猫、あるいは持病があって免疫力や体力の低下した犬・猫は急激な暑さや寒さに弱いので、1年を通じて快適な温度を保つ必要があります。
では気温が何度なら適切なのかというと、種類や年齢、健康状態など個体差もあるため「何度なら安心」とは言い切れません。ただし、同居する人間が快適な温度であればおおむね問題ないと考えて、それを基準に個々の健康状態や年齢、種類によって調節するのがペットと同居する場合の適正温度かと思います。
Q4 ペットにも空気清浄機はあったほうがいいの?
A4 ペットと人間が健康に暮らすためにはキレイな空気が必要です新型コロナウイルスの流行もあり、空気清浄機を置いている家庭も多いことでしょう。ペットと人間の健康にキレイな空気は必要ですから、空気清浄機や有害物質を吸着する効果のある壁材などを活用してください。空気が汚れてくるとハウスダスト、ニオイなどが発生し、病気の原因となることがあります。
Q5 室内の湿度は気にしなくても大丈夫ですか?ペットにも影響はありますか。
A5 高温多湿は熱中症、乾燥は気管疾患の原因に近年、夏は猛暑日が続いていますね。部屋の中にいても高温多湿になると熱中症が心配ですので、温度だけではなく湿度にも気をつけましょう。
特に肥満気味の犬や猫、短頭種の犬、慢性腎疾患のあるシニア猫などは体温調節が苦手ですから、ケアしてあげてください。反対に冬の乾燥は気管疾患の原因となり、咳が止まらなくなる犬もいます。適温と同じぐらい、適切な湿度もペットの健康には欠かせません。
Tips!!
エアコンだけに頼らず、断熱、遮熱など、住まいの性能を向上させるのも大切。
Q6 外の音にびっくりしてしまうことがあるのですが、どんなことに注意したらいいでしょうか。
A6 生活音には慣れますが、それ以上の大きな音には気をつけて救急車やパトカーのサイレンに吠える、雷や花火大会、道路工事の音を怖がる──これは「音に警戒して身を守る」というペットの本能なので、ある意味、仕方がないことです。
ただ、生活音よりも大きい音はストレスですので、道路側ではなく静かな場所にハウスを置くなどの対策をしてください。ちなみに音で怖がるたびに「大丈夫だよ」となでるのは逆効果の場合も。ペットに「これは怖いことなんだ」と思わせてしまうため、まずは静かな環境を整えるのがおすすめです。
Q7 吠え癖をつけないためには、どんなことに気をつけるといいですか。
A7 まずは「吠える原因」の特定を。恐怖心や警戒心を取り除く対策も「吠えてはダメ」は人間側の都合なんですよね。消防車のサイレンなど何かの音に恐怖心や警戒心を抱いている場合もあるし、何か飼い主に伝えたいことがある場合もあります。吠えると隣近所が気になり、つい叱ってしまう、そうするとますます吠える──となる前に、まずは「なぜ吠えるのか」の原因を見つけて、取り除きましょう。その上でトレーナーに相談するのも効果的です。
Q8 誤飲を防ぐには、どうしたらいいでしょうか。
A8 誤飲は飼い主の責任です!念には念を入れて注意をペットは本当に目に付くものを食べてしまいます。私が診察してきた中では靴下やカードを飲み込んでしまった子もいました。そして、意外と学習しないというか、同じものを何回も飲み込んでしまう子もいます。
気管に詰まれば息ができなくなりますし、薬品類も命に関わる危険があります。お腹から出てこなければ開腹手術をしなくてはなりません。ですから飼い主さんが念には念を入れて、口や手の届く範囲に余計なものを置かないようにしてください。
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Q9 うちの猫は室内飼いのため、外に出ることがありません。運動不足の心配はないのでしょうか?
A9 猫によっては運動嫌いな子も。飼い主の工夫で運動不足解消をキャットタワーを上り下りする子もいれば、1日中ゴロンとしている子もいて、猫の運動不足にはその子の性格も関係します。ただ、人間と同じで、ごはんを食べてゴロゴロしているのは健康的な暮らしとはいえませんよね。
肥満も心配ですから、適度な運動は必要です。猫じゃらしで遊んであげるなど、飼い主さんが工夫してあげましょう。キャットタワーを窓辺に置いてあげると、外を飛ぶ鳥などを目で追うため、いい刺激になりますよ。
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Q10 猫はどのくらいの高さから落ちると危険ですか?
A10 家の中なら2 階から落ちるぐらいでケガはしません。高さよりも障害物に注意を猫はキャットタワーなど高い所が好きですよね。「落ちても大丈夫?」と気になりますが、元気な猫が屋内の2階から1階に落ちるぐらいではケガはしません。
ただし、飛び降りる時にカーテンレールに足が引っかかったり、家具に挟まったりすると骨折や脱臼をするケースがあるので、家具の配置には注意を。また、シニア猫が関節炎になると上手に着地できない場合がありますから、気をつけてあげましょう。
Q11 肥満になるとどんな問題がありますか?
A11 関節への負担、糖尿病などが心配です人間と同じで、犬も猫も太りすぎると関節への負担、代謝性の糖尿病などの恐れがあります。また、同じ大きさの心臓で3キロの体に血液を送るのと、6キロの体に血液を送るのとでは負担が違い、心血管疾患を引き起こす可能性もあります。太ってきて体を動かすのが億劫になり、さらに肥満が進む──という負のスパイラルに陥らないよう十分に気をつけてあげましょう。
information
ゼファー動物病院
東京都八王子市郊外にある動物病院。高尾山のふもとにあるため、散歩がてら訪れる人も多い。一般診療のほかに専門外来の日を設け、皮膚科、循環器科、腫瘍科、リハビリテーション科で専門獣医師が診療を行っている。またワクチン接種の済んだ子犬を対象にした、しつけ教室も開催。
Team HOPE
ペットの健康診断を推奨する獣医師団体で、上條圭司先生が代表理事を務める。「最良の医療は予防医療」だと考え、「ペットの健康診断の普及」「気軽に動物病院に相談する環境を整える」「ペットとの良好な共生を目指した環境づくり」という3 つの活動に取り組んでいる。
取材協力
株式会社ストックアンドフロー
「動物病院の待合室を、飼い主様に愛される待合室へ」がモットー。上條先生はじめ、多くの動物病院様にご愛顧いただき、動物病院に寄り添ったオーダーメイド仕様かつ定期訪問を兼ねた病院密着型デジタルサイネージ(電子看板)を全国規模で運営。