私たちが思っている以上に、階段は犬にとって危ない場所です。足腰への負担や障害につながったり、思いもよらぬケガをしたりなどの危険性が潜んでいます。
しかし、防ぎようのない危険性ばかりではありません。飼い主さんの少しの工夫で階段の危険や負担から愛犬を守ることはできます。
この記事では、認定動物看護師の資格を持つ筆者が「犬が階段を使うと危ない理由」とともに「階段でのケガ対策」や「安全に階段を使う工夫」などを解説します。
犬が階段を使うと危ない理由
犬が階段を使うと危ない理由は大きく2つです。
- 足腰への負担が大きい
- 落下の危険性がある
足腰への負担が大きい
そもそも階段は犬が使うのに適した構造ではありません。犬が階段を使う際、上るときは後肢で全体重を支え、下りるときは前肢で全体重を支えます。普段は4本足で立っている犬が階段の使用時は2本足で立つことになるため、足腰に負荷が大きくかかってしまうのです。
犬が階段を使うことによりかかる足腰への負担は、人間の3倍以上とも言われています。
落下の危険性がある
階段で足を踏み外したり滑ったりすると、階段の下まで転げ落ちるリスクがあり危険です。高い場所からの落下には、以下のような危険性が伴います。
- 頭を打った場合、脳しんとうや前庭疾患などで正常に歩けなくなったり眼振の症状が出たり、重大な障害が残る
- 背骨を強く打った場合、背骨に走る神経が傷つくと脚や下半身全体がマヒしてしまう
- 骨折する
- 落下時の衝撃で内臓を痛める
階段の使用がとくに危ない犬の種類・特徴
ここでは、階段の使用がとくに危ない犬の種類や特徴をまとめました。
- 胴長短足の犬
- 肥満体型の犬
- 小型犬
- 0~1歳のパピー犬
- 足腰が弱ったシニア犬
胴長短足の犬
胴長短足の犬と言えば、以下の犬種が挙げられます。- ダックスフンド
- コーギー
さらに、ダックスフンドやコーギーは「軟骨異栄養性犬種」という犬種にも当てはまります。遺伝的な原因で椎間板ヘルニアを発症しやすい犬種であるため、階段の使用によってさらに椎間板ヘルニアの発症リスクが高まってしまいます。
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肥満体型の犬
肥満体型の犬は、支える体重が重い分足腰への負担も大きいです。普段から細い脚で重い体重を支えている肥満犬は、階段を使うときはその体重を2本の脚だけで支えることになります。当然、足腰への負担は大きくなるでしょう。
小型犬
小型犬は骨が細いため、負荷や衝撃がかかった際に骨折しやすいです。例えば以下のような犬種が当てはまります。- トイ・プードル
- ポメラニアン
- ミニチュア・ピンシャー
- ヨークシャー・テリア
- イタリアン・グレーハウンド
- パピヨン
- チワワ
0~1歳のパピー犬
0~1歳のパピー犬は骨が成長段階で強度もまだありません。好奇心旺盛な時期のため、高いところに上ったりいきなりジャンプしたりする子も多いでしょう。しかし、衝撃への耐性はまだまだ未熟な身体のため、ケガをするリスクも高いです。
足腰が弱ったシニア犬
犬がシニア期に入ると骨や筋力が弱ってくるため、階段や段差で足腰を痛めやすいです。視力や反射神経の低下により、自分の身体を危険から守る力も下がっていきます。不意に転んだり段差から落ちたりすることも珍しくありません。
一緒に生活しながら、危ないことがないように見守ってあげましょう。
階段の上り下り時に多い犬のケガ4選
ここでは、階段の上り下り時に多い犬のケガについて、症状・サイン・対策などを解説します。
- 椎間板ヘルニア
- 膝蓋骨脱臼(パテラ)
- 骨折
- 内臓を痛める
椎間板ヘルニア
(出典:みんなのどうぶつ病気大百科)
椎間板とは、背骨同士をつなぐ部分にあるクッションの役割をする組織です。椎間板は、「繊維輪」という繊維軟骨性の組織が何重も層になってゼリー状のやわらかい「髄核」を包み込む構造をしています。腰への負担が積み重なると、外側の繊維輪に亀裂が入って中の髄核が飛び出し、椎間板ヘルニアを発症してしまうのです。
主な症状・サインは以下の通りです。
- 痛そうにする・触ると嫌がったり鳴いたり怒ったりする
- 歩き方に異常が見られる
- 麻痺(主に後肢)
- かがんだり腰を曲げたりすることが難しく、排泄しづらそうな様子が見られる
- しっぽが上がらなくなる
犬は人間との生活の中で椎間板ヘルニアになりやすい生き物です。犬と暮らす方は、椎間板ヘルニアの危険性が日常のあらゆる場面に潜んでいることをよく知っておきましょう。
階段を使わせない・人間の赤ちゃんのように脇を持ち上げる抱っこはしない・なるべくピョンピョン跳ねさせないなど、日頃からできる限り対策をしていくことをおすすめします。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝蓋骨脱臼とは、犬の膝にあるお皿のような骨が内側や外側に外れてしまうものです。階段を上り下りしているときや踏み外した時の衝撃で発症しやすく、一度脱臼するとその後も脱臼しやすくなると言われています。主な症状やサインは以下の通りです。
- 跛行(異常な歩き方)やスキップ歩行をする様子が見られる
- 時たま後肢を後ろに伸ばして脱臼を直そうとする
- 腰をかがめて内股歩きをする
- 骨の変形が見られる
普段から飛び跳ねさせたりクルクル回らせたりなど、膝が外れやすい動きは避けるようにしましょう。
骨折
犬は我慢強く、骨折をしていても動けるなら動いてしまうことが多くあります。だからこそ些細なサインも見逃さないようにしましょう。骨折時の主要な症状やサインは以下の通りです。
- 脚を上げて立ち止まっている
- 触ると嫌がる・鳴く・怒る
- 足を引きずっている
- 元気がなくなる
内臓を痛める
落下時の衝撃で内臓を痛めると以下のような症状やサインが見られます。- 嗚咽・嘔吐
- けいれん
- 口から泡を吹く
- 元気がなくなり、ぐったりする
- 血尿
愛犬に階段を使わせないようにするには?
ここでは、愛犬に階段を使わせないようにするアイデアを紹介します。
- 階段への侵入を防ぐゲートを設置する
- 階段の使い方を教えない
- 抱っこをして階段を使う
階段への侵入を防ぐゲートを設置する
階段に入らせないために侵入を防ぐゲートを設置する方法があります。ジャンプ力がある子はゲートを飛び越えてしまう場合もあるため、愛犬に合わせてゲートの高さや機能性を検討しましょう。中でもおすすめなのは「ドギーフェンス」です。ガラス仕様のゲートのため、愛犬にとっては飼い主さんの姿がゲート越しでも見えて安心です。
また、性格が大人しくあまりジャンプ力もない子なら「スタンド 簡易 ペットゲート」のような簡易的なものでもいいかもしれません。
なお、犬もいきなりゲートが設置されると戸惑い、鳴きわめいたり吠えたりなど問題行動につながる可能性があります。ゲート設置をしたばかりの頃は「”マテ”が出来たら褒める・おやつをあげる」などしてトレーニングを重ねていくのが良いでしょう。
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階段の使い方を教えない
階段での事故やケガを防ぐためには階段の使い方を教えないのが一番良い方法です。犬は階段の使い方を一度覚えると、2階に上がった飼い主さんを追いかけたり、2階が気になって勝手に上ったりなど、自由に使うようになってしまいます。
まだ階段を使ったことのない犬には、階段の使い方をはじめから覚えさせないのが理想的です。
抱っこをして階段を使う
「階段=飼い主さんに抱っこしてもらう」という認識が犬の中にあれば、勝手に階段を使うことはほとんど無いでしょう。階段の上り下りを覚えてしまった子でもまだ覚えていない子でも「階段では抱っこする」という習慣をぜひ試してみてください。
愛犬が安全に階段を使うための工夫
ここでは、愛犬が安全に階段を使うための工夫についてまとめました。
- 滑り止めマットを敷く
- ステップ階段を使う
- スロープを設置する
滑り止めマットを敷く
階段は滑りやすい床材でできていることが多いため、犬にとっては踏ん張りにくく滑りやすい場所です。滑り止めマットがあるだけで、足を滑らせて落下してしまうリスクを格段に減らせます。おすすめなのは「おくだけ吸着折り曲げ付階段マット」です。
上から掃除機をかけても吸い上がることなく、お掃除の邪魔にもなりません。
ほかにもさまざまな種類の滑り止めマットがあるため、おうちに合うものを見つけてみてください。
ステップ階段を使う
1階から2階への階段を上り下りさせることは防げても、玄関や屋内の数段の段差などを愛犬に上り下りさせなければならない状況もあるでしょう。そういう状況でステップ階段が役に立ちます。
コンパクトで応用の効くものを使いたい方におすすめなのが「ファブリック クッション ステップ マウンテン」です。
ステップ階段としてはもちろん、展開すればマットとしても使えます。2つ組み合わせれば、背の高いベッドやソファーの上り下りにもピッタリです。
以下の記事でもいくつか紹介しているため参考にしてみてください。
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スロープを設置する
ソファーやベッドなどの少しの段差も無くしたい方にはスロープがおすすめです。スロープなら足腰にかかる負担も少なく安全に上り下りができます。スロープで人気なのは「大切な家族のためのゆったり3段ドッグスロープ」です。
やわらかい素材でできており、安定感もあるためさまざまな大きさのワンちゃんに対応できます。インテリアに馴染むデザインも飼い主さんに人気です。
また、これからソファを新調しようとしているならペットスロープが一緒になったソファ「FLUFFIRU(フラッフィル)」もぜひチェックしてみてください。
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もしも愛犬が階段や段差でケガをしたら
愛犬が階段や段差でケガをしたら直ちに動物病院へ連れて行きましょう。ケガの状態によって適切な応急処置も異なる場合ため、動物病院に電話をして指示を仰ぐことをおすすめします。
また、飼い主さんがその場でできる対応としては「安静」が一番です。犬は痛くても歩き回ることがあるため、ケージに入れて動ける範囲を狭めてあげるようにしましょう。
犬が階段や段差でケガをしたときの主要なサインは以下を参考にしてください。
- 足を引きずって歩く
- 触ると「キャン!」と鳴く・怒る
- ぐったりする・元気がなくなる
- しっぽが下がる
- 後肢が立たなくなる
- 片足を上げたままの状態が続く
階段に潜む危険性を理解し、愛犬と共に安心安全な暮らしを
人間と違い、犬の身体は構造的に階段で負荷がかかりやすいです。若いときには問題なく軽快に上り下りできても、年齢を重ねるにつれて負荷が積み重なり、椎間板ヘルニアを発症してしまうこともよくあります。また、突然バランスを崩して転べば骨折してしまう危険性もあるでしょう。
家の中では愛犬に階段を使わせないのがベストです。家の構造上どうしても階段や数ステップの段差がある場合は、危険が伴わないように工夫をしてあげましょう。
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