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【獣医師監修】犬に蚊取り線香は問題ない?夏の蚊よけについて解説

夏が近づくと気温の上昇に伴い、蚊の活動も活発になります。

犬と生活する家庭では、犬への影響を考慮して蚊取り線香の使用を躊躇することもあるでしょう。

この記事では、犬の健康への蚊取り線香の影響や蚊の対策方法について獣医師である筆者がお話させていただきます。

なぜ犬に蚊の対策が必要なのか?

犬は人間と異なり、吸血されて強い腫れやかゆみなどが毎回起こるわけではありません。

蚊の唾液に含まれる成分に対してアレルギー反応を起こして皮膚炎を起こす場合がありますが、人間がかゆみを起こすメカニズムと異なります。

犬が蚊の対策が必要な理由はフィラリア症への注意が必要であり、蚊がフィラリアを媒介するからです。

犬のフィラリア症について

フィラリア症は、蚊によって媒介されたフィラリアの子虫が、犬の体内に入り成長することで起こる疾患です。

成長したフィラリアは血管内や心臓で、血液の循環する機能を低下させ、心臓へ負担をかけます。

フィラリア症で見られる主な症状は以下です。
 
◆咳や苦しさなどの呼吸器症状
◆腹水(お腹が膨らむ)
◆元気消失
◆食欲不振

最近ではフィラリア症が怖い病気であるということもわかり、予防への意識が高まりましたが、以前は多くの犬たちの命を落とす原因となっていました。

検査によってフィラリア感染の有無を知ることが可能であることや、現在は投薬での治療が可能となったこともあり、フィラリア症で命を落とす犬たちは減少しました。

しかし、死に至る可能性のある危険な病気であるため、対策が必要です。

病院で処方されるフィラリア予防薬について

フィラリア症は、死に至ることもある危険な病気です。

以前はフィラリアに感染して命を落とす犬たちがたくさんいました。

犬たちをフィラリアから守るべく、最近ではフィラリアの発症を防ぐ様々な種類の薬が開発されています。

しかし、気を付けなければならないのはフィラリア予防薬として処方される薬は、フィラリアの発症予防のための薬であるため、蚊から犬を守る薬ではないということです。

フィラリアが体内に入り、成虫になる前に投薬の都度、駆虫していくことでフィラリアの成虫による循環器や呼吸器などの症状を起こらないようにすることがフィラリア予防薬のメカニズムです。

駆虫薬であるため、投薬時にフィラリア成虫が存在すると血管や心臓内で駆虫され、ショック症状を起こす危険があります。

フィラリア成虫が体内で死滅することによって起こすショックを予防するために、フィラリア投薬の再開前に検査が必須です。

そして、蚊に対するアレルギー反応や子虫が体内に入らないようにする万全な予防として、媒介する蚊そのものへの対策をとることが大切です。

愛犬がフィラリアに感染する可能性はある?

以前は死亡原因の上位だったフィラリア症ですが、現在では投薬アイテムが豊富であることやフィラリア症に対する啓もうが広がっているため、感染犬は少なくなった傾向があります。

しかし、現在の日本でもフィラリアに感染する可能性はあります。
陽性の犬は存在し、生活する中で近くにフィラリア陽性犬と蚊が存在するのであれば、感染は成立します。

愛犬を守るためにも、そして愛犬が他の犬たちへの感染源とならないためにもしっかりと予防することが大切です。
蚊取り線香は犬に使用可能?注意点は?

蚊取り線香は犬に使用可能?注意点は?

蚊取り線香は、日本で古くから夏の蚊よけとして使用されてきたアイテムです。

しかし煙が出ることや独特なにおいがすることなどから、使用を躊躇している飼い主さんも多いと思います。

犬への健康面や、事故へのリスクなどを考えると不安に感じる場合もあるでしょう。

ここでは犬と生活する家庭が蚊取り線香を使用することが可能なのか、また使用する際の注意点をお伝えします。

蚊取り線香は犬に使用可能

蚊取り線香の原料として、蚊取り線香を形作るための除虫菊や植物の粉末、つなぎのでんぷん、そして蚊に対する有効成分としてピレスロイド系の殺虫剤が含まれています。

基本的には犬と生活する家庭で使用可能ですが、まれにニオイなどに反応を示して体調不良になることもあります。

体調の変化を見ながら使用すると安心です。

また、最近では犬用の蚊取り線香も販売されています。

人間用の蚊取り線香と比較すると、天然成分で作られていることや、けむりが優しいことなどが特徴として挙げられます。

人間用の蚊取り線香の使用が不安な場合、犬用の蚊取り線香の使用をおすすめします。

犬が近くにいる場合の蚊取り線香の使用注意点

蚊取り線香を使用しても犬にとって問題ありませんが、以下のようなことに注意する必要があります。
◆火事
◆誤飲
◆ペット用のものを使用

蚊取り線香は火をつけて使用するものです。

活発な犬や犬の行動、蚊取り線香の置き場所次第では、火事につながる危険性があります。

手の届かない場所へ置くことや、人のいない時間帯に使用しないなどの工夫が必要です。

そして誤飲も注意しなければなりません。

独特のにおいのする蚊取り線香は、好奇心旺盛な犬にとって、口に入れてみたくなるものでしょう。

誤って食べてしまい、体調不良などにつながる危険性があります。

人間用の蚊取り線香を焚いても問題ないケースが多いですが、どの犬でも体調不良を起こさないとは限りません。

できれば愛犬の健康のためにペット用の蚊取り線香を使用することがおすすめです。

犬にも安全性が高いとされる蚊取り線香ですが、起こり得る事故やリスクを考えた対策をとることで、より有意義に安心して使用できるでしょう。

蚊取り線香以外の虫除けはどんなものがある?

使用方法次第では、犬にとって使用できるということがわかった蚊取り線香ですが、他にも様々な蚊よけ対策があります。

例えば、室内の構造の工夫で物理的に蚊を防ぐ場合と、薬剤やアロマスプレー、植物など蚊の苦手なものを使用することで蚊を防ぐ場合などの方法が挙げられます。

ライフスタイルによっては蚊取り線香をどうしても使用できないケースや、飼い主さんの好みなどで蚊取り線香以外のものを使用したいというケースもあるでしょう。

蚊取り線香以外に考えられる蚊の防ぎ方をご紹介します。

網戸

古くから、夏に涼しい風を取り入れながら、蚊などの虫をよけるために使用されてきたのが網戸です。

しかし、網戸というと破れてしまうこともあり、犬と生活する家庭には不向きなのではと考えてしまいがちです。

最近では網戸のデメリットとなる部分を排除できるよう、工夫された網戸が開発されています。

例えばペットネットという建材であればネットがコーティングされているため、強度がアップしていて安心です。

破れにくいため、活発な犬との生活でも安心して使用することができます。

他にも、網戸の広い面では破損しやすくなる危険性もありますが、金属製の枠のついているリリーブであれば、飛びついたりした場合でも網がたゆまずに安心です。

折戸式なので、開きたい面積を調節することもできて、開閉もスムーズです。

様々な網戸が開発されているため、ライフスタイルに合ったものを選択することで、通気性や虫よけなど網戸のメリットを上手に取り入れられるでしょう。

リフォームなどを考えているご家庭は、愛犬との生活の快適さだけでなく、虫よけなどの健康面での対策もとれる建材の使用なども検討することをおすすめします。

より快適な生活につながる可能性が高いです。

蚊よけスプレー

市販の蚊よけスプレーも有効です。

ただし、人間用を使用すると、犬にとってよくない添加物などが含まれている場合もあり、なめた際に摂取してしまい体調不良を示すといった危険性も考えられます。

ペット用と表記されている蚊よけスプレーを使用することをおすすめします。

ペット用アロマの手作り蚊よけスプレーも有効ですが、稀に体質で体調不良を示す犬も見られる可能性があります。

使用した後も、噴霧した部分をなめていないか、体調の変化が見られないかなどを確認することが安全に使用するために大切です。

アルコールを使用しているものは、皮膚トラブルにつながる危険性もあります。

どんなものが含まれているのか、よく把握したうえで使用しましょう。

その他

他にも、洋服を着ることや、外出後のブラッシングなどで、蚊の皮膚や被毛への付着や、外から室内への蚊の取り込みを防ぐことが期待できます。

最近では他にもたくさんの蚊よけに便利なアイテムも開発されています。

それぞれのアイテムの使用に際して注意するべき点や、メリット・デメリットがありますが、工夫次第で快適に蚊よけを行うことができるでしょう。

また、対策をとるべき虫は蚊だけではありません。

環境によっては、蚊以外の有害な虫に接触する機会の多い家庭も多いのではないでしょうか。

ライフスタイルや、犬の性格、健康面での問題などによって最適な虫よけ対策は様々です。

ストレスに感じることがないよう、いろいろな対策をぜひお試しください。

まとめ

まとめ

犬との生活の中で、快適にかつ健康で過ごしてほしいと願うのは、どんな飼い主さんでも共通の願いでしょう。

蚊の対策は、愛犬の健康を守るために必要不可欠です。

愛犬の体質や家の構造などを考えて、最適なアイテムを選択することで、ストレスなく蚊の対策をすることができます。

蚊取り線香やその他の蚊よけアイテムを上手に使って、快適で健康に長生きできると理想的ですね。
 
この記事を書いたペットとの暮らしの専門家
葛野 莉奈

    獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。

    興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。





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