犬の肉球と言えば「ポップコーンのような香ばしいニオイ」の印象があるでしょう。
くさいと感じる人もいれば、やみつきになるニオイと感じる人もさまざま。愛犬の肉球がくさいとき、心配になる飼い主さんもいるはずです。
この記事では、認定動物看護師の資格をもつ筆者が「犬の肉球がくさい理由」とともに「病院に行くべき状況」や「日頃のお手入れ方法」を解説します。
そもそも肉球ってどんなもの?
画像引用元:PEPPY「犬の「肉球」って、何のためにあるの?」
犬の肉球を裏から見ると上の画像のようなつくりになっています。
表面は角質化した厚い皮膚です。皮膚表面は細かい円錐状突起がたくさん集まり、滑り止めになっています。
肉球の中身は、脂肪・弾性繊維(エラスチン)・膠原繊維(コラーゲン)といった「脂肪と繊維組織」が主な構成要素です。
ここからは肉球の主な役割を見ていきましょう。
【犬の肉球の役割】 ・衝撃を和らげるクッション ・地面からの感覚を感じ取る ・滑り止め ・汗をかいて体温調整をする ・熱や冷えから守る |
衝撃を和らげるクッション
犬の肉球は脂肪と繊維組織がギュッと詰まっているため、クッションのように衝撃吸収をする役割があります。歩いているときやジャンプから着地するときに受ける衝撃を肉球で吸収しケガから体を守るためにも、肉球は大切な体の一部です。
地面からの感覚を感じ取るセンサー
あらゆる神経や血管が集まる肉球は、地面からの感覚を感じ取るセンサーとしての役割もあります。温度・触覚・痛覚・圧覚などのさまざまな感覚を掴み、地面の状況を把握しているのです。
滑り止め
肉球の表面には細かい円錐状突起の集まりがあります。成犬の肉球を触ると分かるように、ザラザラとした感触です。この細かい突起が、スニーカーの裏面のように「滑り止め」となっています。
汗をかいて体温調整をする
犬の体温調整の大半はパンティング(ハアハアと口を開けて呼吸すること)が担っていますが、肉球からの汗も多少なりとも体温調整に関与すると考えられています。ここで、汗を分泌する「汗腺」の種類をチェックしておきましょう。
ニオイが強く体臭の原因となる汗を出すのは「アポクリン汗腺」
ニオイがほぼ無いサラサラとした汗を出すのは「エクリン汗腺」です。
犬の肉球には「エクリン汗腺」が豊富にあります。「体温調整をする汗腺」と言われているため、犬は肉球からの汗で体温調整をしていると考えられているのです。
また、汗で肉球を湿らせてグリップを良くし、滑りにくくする役割もあります。
熱や冷えから守る
肉球は地面からの熱や冷えを体に伝わりにくくする「靴」のような役割があります。冬でも厚手のブーツを履かずに凍った路面や雪道を歩けるのは、肉球のおかげでもあるでしょう。
しかし、あくまで肉球は皮膚であるため、夏の熱い地面での火傷や冬の冷たい路面での凍傷などには注意しましょう。
肉球がくさい理由
ここでは、肉球がくさいとき・香ばしいニオイがするときの理由を解説します。
汗
犬の肉球から出る汗にはニオイがほとんどありません。しかし、汗をかいたときに、犬の肉球に潜むバクテリアが汗と混ざりニオイを発しているのかもしれません。
また、散歩中にアスファルト・土・草などの上を歩いたり、家中を歩き回ったりしたときに肉球についた土やホコリが、汗と混ざって香ばしいニオイになるとも言われています。
細菌・真菌感染
肉球は細菌や真菌感染を起こした際にくさくなることがあります。通常は皮膚のバリア機能で肉球が菌感染を起こすことはありません。しかし、肉球を舐め続けてふやけていたり外的刺激で傷ついたりすると、細菌・真菌感染を起こすことがあります。
肉球そのものが菌に感染することもあれば、肉球の間の皮膚が菌の感染を起こす「趾間皮膚炎(しかんひふえん)」になることもあるでしょう。
菌感染が進行して膿が出ると、その膿がにおいの原因になることがあります。
耳の汚れ・感染症
足で耳を掻いたときに、耳垢や膿が爪に付き足裏からくさいニオイを感じる場合があります。また、何かしらの感染症にかかり肉球そのものや肉球間の皮膚が感染症を起こしたときも、化膿の影響でニオイを発する場合もあるでしょう。
犬の肉球のニオイには個体差がある
健常な犬の肉球のニオイは以下のようなものがあります。
- 香ばしいポップコーンのようなニオイ
- 豆系のニオイ
- 使い古した雑巾のニオイ
肉球がくさいからと言って、すべてが異常や病気のサインなわけではありません。食べるもの・体質・住環境によってもニオイは変わります。
しかし明らかに異常な場合は動物病院へ行きましょう。肉球がどんな状態のときに動物病院へ行った方がいいのか?次の項で説明します。
こんなときは動物病院へ
ここでは犬の肉球のニオイや状態がどんなときに動物病院へ行くべきかをまとめました。
いつもより強いニオイ
↑犬の黄疸が出た時の症状例(画像引用元:ならしの動物医療センター 症例報告 黄疸)
ツンとくさいニオイだったり、いつもよりニオイが強いと感じたら、犬の身体に異常があるかもしれません。
例えば尿毒症・黄疸・歯周病・外耳炎などが考えられます。それぞれどのような状態か以下の表にまとめました。
尿毒症 | 腎機能が低下することにより本来排出されるはずの老廃物がどんどん体内に溜まってしまう病気。 汗にニオイが混じると言われており、肉球がくさくなることがある。 |
黄疸 | 皮膚や粘膜が黄色く染まったり尿の黄色が濃くなったりする症状。 寄生虫・感染症・自己免疫疾患などによって赤血球が壊されると「ビリルビン」という物質が過剰に産生され、黄疸の症状につながると言われている。 また、肝機能低下・ビリルビン排泄路の障害・胆汁が流れる胆管の閉塞などが起きた場合も黄疸が出ることが多い。 汗にニオイが混じると言われており、肉球がくさくなることがある。 |
歯周病 | 歯周組織や歯肉などが細菌感染し炎症を起こす口腔内の病気。ひどくなると血液中にまで菌が入り込むことがある。心臓や腎臓など臓器の健康に害をもたらすこともあると言われている。 汗にニオイが混じると言われており、肉球がくさくなることがある。 |
外耳炎 | 外耳炎で耳を頻繁に掻くようになり、耳垢が爪にこびりつくと、くさいニオイを肉球の方から感じることがある。 |
肉球がくさいと感じるのは、意外にも体の別の場所で問題が起きている場合があります。異変を感じたら動物病院へ行きましょう。
血が出ている・皮膚炎を起こしている
↑肉球間の皮膚炎(趾間皮膚炎)時の症状例(画像引用元:若山動物病院 スタッフブログ 趾間炎)
肉球の乾燥で皮膚が割けたり、歯や小石などの刺激で切れたりすると、肉球から血が出ることがあります。
出血箇所をしばらく押さえて止血できるならあまり問題はありません。しかし、血が止まらない・複数箇所から血が出ている・出血を繰り返すなど異常がある際は動物病院で見てもらうと良いでしょう。
血が出たまま放置すると傷口から菌が入りこみ化膿してくさいニオイにつながる可能性があります。
また、肉球間の皮膚が炎症を起こしている場合も動物病院での正しい診断と治療を受けさせましょう。
極端に固い場合も注意
↑犬のハードパッドの症状例(画像引用元:ひだまり動物病院 犬猫の感染症について ①犬ジステンパー)
ニオイではありませんが、肉球が極端に固い場合も注意が必要です。「ハードパッド」という状態で犬ジステンパーウイルス感染症の恐れがあります。
通常はワクチンを打つため発症することはほとんどありません。ただし法的義務があるワクチンではないため、打たなければ発症することもあるでしょう。
肉球が極端に固いと感じたら念のため動物病院で見てもらうのがおすすめです。また、発症を未然に防ぐために混合ワクチンで予防しましょう。
愛犬の肉球のお手入れ方法・対策を紹介
ここでは、愛犬の肉球のお手入れ方法やニオイ対策を紹介します。
いつも清潔にしてあげる
肉球をいつも清潔に保ってあげるのがニオイや感染症の対策になります。散歩や外で遊んだあとは、足裏を洗ったり拭き取ったりして肉球をきれいにしてあげましょう。
濡らしたタオル・ウェットティッシュ・流し洗いなどでやさしく汚れを取り除いてあげてください。
ウェットティッシュでおすすめなのは「ジョイペット ウエットティッシュα 手足・お尻」です。肉球ケアに役立つとされるコラーゲンも配合されています。
いつものお手入れに。外出で足があまり汚れなかったときの拭き取りに。お手入れをなるべく早く済ませてあげたいシニア犬に。お家に一つあると便利なウェットティッシュです。
また、肉球の間にゴミが入り込むことがあります。気付かず放っておくと皮膚炎などトラブルの原因になることもあるでしょう。トラブルを防ぐために、肉球の間まできれいに汚れを取り除いてあげてください。
なお、肉球を濡らしたら水気をきれいに拭き取ることを心がけましょう。濡れたままだと皮膚トラブルの原因になりやすいです。水気を拭き取るときはやさしく拭き取ってあげてください。
熱い地面・熱湯などに肉球を触れさせないように注意する
熱い地面や熱湯でやけどしないように注意しましょう。やけどをすると皮膚がただれて感染を起こし、くさいニオイにつながることがあります。
犬にとって熱い地面は「真夏のプールサイドを裸足で歩いたとき」と同じくらいの熱さです。犬は自分で肉球のやけど対策はできないため、飼い主さんが愛犬の立場になって対策してあげましょう。
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肉球マッサージをする
肉球マッサージは、血行促進・疲労回復・筋肉の伸展強化・リラックス効果・軟部組織の癒着防止などの効果が期待できます。
【やり方】 1.水で指先を少し湿らせ、肉球を優しくなでていく 2.犬用の肉球クリームやジェルなどを塗りこんでマッサージする |
もしも足を触られることを嫌がるのであれば、無理にやらなくても大丈夫です。
また、肉球マッサージと同時に足の関節も優しくマッサージしてみましょう。
肉球クリームで保湿する
肉球は、乾燥やひび割れにより雑菌が入り感染を起こして化膿するとくさいニオイの原因になることがあります。そうならないために、日頃から愛犬の肉球の様子をチェックし、保湿をお手入れとして取り入れてあげるのがおすすめです。
【やり方】 1.肉球マッサージ後、水で肉球を軽く濡らしておく 2.クリームを薄く伸ばしながら塗る 3.たっぷり塗るのではなく、少量を定期的に塗っていく |
なお、肉球周りの皮膚が荒れていたり、肉球がひび割れて血が出ていたりしたら、無理に触らず動物病院へ連れて行ってあげましょう。
ここからは、肉球の保湿やマッサージ時におすすめのアイテムを紹介します。
ジェルタイプの保湿剤のため、肉球にしっとり感をもたらしながらもベタつきにくいのが魅力です。シリコンブラシが付属されているため、飼い主さんの手を汚すことなく塗れます。
【犬用 国産 肉球ケアクリーム 20g】
含まれる成分はどれも食品に使われている成分のみで作られているため、愛犬が舐めても安心の肉球クリームです。実際に使った飼い主さんからも「安心」との評価を受けています。
愛犬の肉球がくさいのは病気のサインの場合も!日頃からよくチェックしてあげよう
健常な犬の肉球は、香ばしいニオイか無臭のことが多いです。しかし、肉球のニオイは飼い主さんによっても感じ方が違うため、「くさい」と感じるニオイがした場合不安になる飼い主さんも多いでしょう。
肉球のニオイだけではなく、他に身体に異変がないか?何かしらの症状がでていないか?お散歩後の足を洗うときなどに日頃からチェックしてあげると良いでしょう。おかしいと感じたら、早めに動物病院で診てもらうようにしましょう。
また、肉球のトラブルを防ぐために、この記事を参考に日頃からのケアや対策にも気を遣ってみてください。
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