イギリスではペットの治療代が尋常じゃないレベルに高騰し続け、多くの飼い主を苦しめている。
ブリジェンドのサーンに住むダニエレ・エイモスさんは、ハムスターのライラの具合が悪かったときにまず獣医に相談した。ライラは歯に問題があり、その歯を抜くには450ポンド(9万円)から500ポンド(10万円)かかると言われた。
その金額を聞いてダニエレさんは「犬や猫ならともかく、ハムスターに500ポンド?バカバカしい」と断った。彼女は生活保護を受けており、ハムスターのためにそこまで支払う余裕はなかった。
それでも彼女はライラを助けるため、より安価な方法をインターネットで探した。
「私の住んでいる地域ではほかにハムスターを扱う獣医を見つけることができなかったから、ハムスターの歯の正しい切り方をYouTubeチャンネルで調べることにしたの」と、自分で治療する決断をした。しかしこのようなDIYの治療を獣医は推奨しておらず、動物愛護団体も注意を促している。
世界的なインフレの中で、とくに獣医の治療費は他の商品やサービスよりも速いペースで上昇している。たとえばペットに塗る小さな軟膏1つに120ポンド(2万4000円)を払ったという女性や、愛犬の緊急治療費4000ポンド(81万円)を支払うために自分の持ち家を売却しようかと真剣に考えたと話す女性もいる。
なぜペットの治療費がここまで高騰してしまったのか?
イギリスではペットの飼い主が増えているが獣医は不足しており、離職率も高い。調査によると、ほとんどの動物病院がもはや独立経営で成り立っていけない状況だという。イギリスにはCVS、IVC、Linnaeus、Medivet、Pets at Home、VetPartnersという6つの大企業グループがあり、これらの企業がペット医療マーケットの半分以上を占めている。
過去10年間で、これらのグループが所有する獣医診療所の数は約10%からほぼ60%に増加している。こうした変化によってペットの飼い主は選択肢を制限され、グループの独占によって価格競争も弱まっている可能性があると指摘されている。
歯止めがきかないペット治療費によって影響を受けているのはやはり低中所得者であり、調査によると10人に4人が経済的な重圧のために食事を与えられなかったり、フードバンクを利用したり、獣医に行くのをやめたりしたと報告している。
これは一概に飼い主だけに責任を問うことはできない。悪循環から脱し、動物が適正な価格でケアされるように州や政府が介入していく必要があるだろう。