オクラホマ州で歯科医をしているクリフォードさんには、カルという名前の9歳の息子がいる。カルくんは3歳からタコに異常なほどの興味をもち、誕生日やクリスマスにはいつも「僕がほしいのはタコだけ」と言うほど惚れ込んでいた。
両親はカルくんにタコのおもちゃやTシャツを与え、ハロウィンにはタコのコスチュームを着せ、暇さえあれば水族館へ出かけてタコ鑑賞をさせてあげた。
しかし、どうしても本物のタコがほしいという息子の願望を無下にできず、ついにクリフォードさんはカリフォルニア原産のタコを郵送で手に入れ、9歳の誕生日プレゼントとしてカルくんに贈った。
カルくんはそのタコに「テランス」と言う名前をつけて毎日欠かさず世話をしていたが、タコの飼育は驚きの連続だった。
はじめテランスはオスだと思っていたが、4ヶ月が経った頃に小さな卵を産み、メスであると判明。クリフォードさんは無精卵だと思ったが、水槽を洗うときにその卵を指でつまんで観察していると、卵がはじけてなかから小さな赤ちゃんが出てきたのだ。驚きと衝撃で慌てふためく家族をよそに、テランスの卵は次々と孵化し、翌週には49個の赤ちゃんが生まれ、テランスの水槽は大所帯となってしまった。
「タコの飼育はお金がかかるし、家はあちこち水浸しだよ」とクリフォードさんは苦笑いをする。テランスとその赤ちゃんを飼育するために、海水、水槽、フィルター、温度調整機、餌となるカニやカタツムリなどに、数千ドルを費やしてきた。お風呂にも小さな水槽を置かねばならず、カルくんの部屋のカーペットを水浸しにしたことも多々ある。
タコの飼育はかなりの時間と労力、お金がかかるが、それでもクリフォードさんは「やりがいがある」と感じている。テランスを撫でたり、透明な容器にカニを入れて、テランスが足で器用に開けて食べる様子などを動画に撮ってTikTokにアップするたびに多くの反響があり、それも飼育のやりがいにつながっているようだ。
多くの科学者は、タコをペットとして飼うことを勧めていない。ほとんどのタコは、生きた餌はもちろん、細かく調整された水中環境、そして刺激を必要とするため、人間の赤ちゃんを世話するのと同じくらい大変なのだ。また、好奇心旺盛なタコはしばしば水槽から逃げ出そうとする。
カリフォルニア州モントレーにあるモントレー・ベイ水族館の飼育部長、ポール・クラークソン氏は、クリフォード一家のことをはじめて聞いたとき、「タコの世話などする資格はない」と思ったという。しかし、クリフォードさんのTikTokビデオを見て、彼は "嬉しい驚き "を覚えた。
「タコへの愛を感じられるし、彼らは水族館の飼育員として世話をしながら、卵の孵化とその飼育というかなり驚くべき仕事をしているようだね。明らかに多大な時間と費用を費やしている」と感心している。
生半可な興味ではできないタコの飼育を通し、カルくんはもちろん家族全員が大きな学びとやりがいを感じているようだ。カルくんがこの経験を土台にして、これからどんな道を歩んでいくのか楽しみだ。