イギリスではペットの治療費や薬代が信じられないほど高騰しており、獣医側と飼い主の間で論争が起こっている。
イースト・エアシャーに住むケリー・イムリーさん(41歳)は、愛犬を動物病院に連れて行ったところ、30mlのチューブ入り軟膏が120ポンド(2万8000円)だと言われた。値段に驚くケリーさんにその獣医は「自分で薬の値段をネットで検索して、モリソンズ(ペット処方箋のオンラインストア)で買った方が安いですよ」とアドバイスした。
結局ケリーさんは病院に26ポンド(5000円)を払って処方箋をもらい、モリソンズで同じ薬を37ポンド(7000円)で購入した。
なぜペットの薬は人間の薬よりも高いのか?また、なぜ動物病院はネット価格の3倍以上の値段で薬を売るのか?
ぼったくりではないかという批判に対し、南ロンドンで動物看護師をしているアンジェラさんはこう答える。
「独立した動物病院は街の商店のようなもので、オンライン薬局のような処方箋薬の割引はできません。私たちは有効成分が同じでも、人間用の安価なジェネリック医薬品ではなく、認可された動物用医薬品を処方しなければなりません。動物用医薬品は人間用医薬品と同じ規模で生産されていないためコストが高くなるのです。
また、オンラインで薬を買うのと獣医から買うのとでは、規模の経済が違います。薬局は大量に購入し、ほとんどの獣医ができないような取引で数を確保します。しかし、オンライン薬局では薬は安く買えても、20年間動物に携わってきた経験に基づくアドバイスは得られません。私たちはサービスを提供しているのです」。
MRIなどの検査・治療費用も高騰しており、サットン・コールドフィールドに住むスティーブ・モイランさんは、愛犬ブルースが脳腫瘍になったとき、検査、X線撮影、治療に16,000ポンド(300万円)を費やした。人間のMRI検査の10倍の金額を払ったにも関わらず、ブルースは間もなく死んでしまった。
獣医師は飼い主に対して、ペットが元気なうちから病気やケガの治療がいかに複雑で高額になるかを理解し、保険に加入しておくことの重要性を強く訴えている。
また、定期的な健康診断やワクチン接種、避妊手術をすることで、のちのち多額な請求に頭を抱える事態を回避できるため、予防医療も軽視してはいけない。
世界的に高騰化しているペットの医療費。もしものときに困らないように、検診はもちろん、保険加入も飼い主の責任としてますます重要になっていくだろう。