おそらくだれもが図書館で借りた本を延滞してしまった経験があるだろう。しかし、本を返せない理由は人それぞれ異なる。単にいそがしくて返し忘れていたこともあれば、本を失くしてしまった、あるいはペットが本をかじって損傷させてしまったなど、延滞金や弁償を求められるようなケースもある。
本を失くした場合、気まずくて図書館に行くのをやめてしまう人もいる。そうなると借り手にとっても、図書館にとっても都合のいいことはひとつもない。返却されない本はずっと貸出中となり、返さない人は図書館に行かないので本を借りる機会を失ってしまう。
こうした問題はどの州でも起こっているが、マサチューセッツ州のある図書館は返さない人に罰金を課すのではなく、おもしろいアイデアで本の返却をうながす取り組みをしている。「猫の延滞料免除プログラム」と呼ばれ、延滞した人が図書館のスタッフに猫の写真か絵、または猫について会話をすれば、本の延滞料を減額あるいは免除するというしくみだ。
「図書館司書はみんな、本とカーディガン、そして猫が大好きです。彼らに猫を見せれば頬がゆるみ、会話もはずむ。延滞している人がどうしたら図書館にまた来てくれるようになるかと考えた末、私たちに身近な猫に手伝ってもらうことにしたんです」と話すのは図書館の館長。
図書館にとって辛いのは、本を失うこと以上に利用者を失うことだ。とくに子どもに延滞料を課すともう図書館には行きたくないとなり、ますます本から遠ざかってしまう。
コロナ以降、延滞料のルールを取り去る図書館も増えているようだが、ペナルティがないとなかなか本が返されないという問題もある。
バランスが非常に難しいが、まずは現状で返却してない人が図書館に戻ってくることが大事だ。そういった意味で、猫を使った免除プログラムは効果があるのではないかと注目されている。