ドアを閉めておくと、飼い猫が外から「入れてー!」とドアを引っ掻く。中に入れて間もなく「出してー!」とまたドアを引っ掻く。その度にドアを開けてやるのが面倒だという飼い主の悩みを解決してくれる策が「ペットドア」だ。
実はこのペットドア。現代人のアイデアから生まれた発明と思いきや、400年以上前から活用されていたようだ。
歴史あるイギリスのエクセター大聖堂では、大きな天文時計に通じる古い木の扉には丸い猫型の穴が彫り出されている。
残っている記録によると、ウィリアム・コットンという司教が1598年に大工に指示してこの扉を取り付けたと言われている。なぜ猫が行き来できるようにしたのか?おそらく飼い猫がネズミを捕るためだろうと作家で歴史家でもあるダイアン・ウォーカー氏は推測している。
ウォーカー氏は、大聖堂にネズミが住み着いたのは時計の潤滑油に使われていた動物性脂肪のせいだと説明する。司教の飼い猫が時計の機械がある部屋でネズミを捕まえるために扉の穴が開けられたという考えは、確かにつじつまが合う。
欧米の子どもなら誰でも知っている童話「ヒッコリー・ディッコリー・ドック」はネズミが時計を駆け上がったという歌詞だが、まさしくエクセター大聖堂のことを歌っているようだ。
世界にはもっと古いペットドアが存在する可能性はあるが、ウォーカー氏はエクセター大聖堂が 「最も古いもののひとつ」だと思いたいと言う。
現在でも猫たちはこのペットドアを通り抜けて聖堂を出入りしているようで、大聖堂の現在の住人猫であるオードリーは、ヘビーユーザーとしてその写真が雑誌にも掲載された。
唯一400年前と変わったのは、悲しいことに大聖堂の猫たちはもう報酬(ネズミ)をもらえないということだろう。