ノラ猫や外飼いの猫による野生動物の被害は日本だけでなく世界的に大きな問題となっている。
オーストラリアでは年間に5億460万匹の野生動物が殺され、そのうち60%はオーストラリア原種で希少な動物たちも含まれる。飼い主に対して猫を外に出すことを禁じるのは現実的に難しいが、とくに夜はできるだけ外に出さないように注意を促している。
ニューサウスウェールズ州のユーロダボラ地方はこの問題に対処すべく、画期的なアイテムを開発した。それは首輪に装着できる猫用のビブで、台形の下敷きのような見た目だ。このビブは猫の前足の動きを制御するのに効果的で、猫が鳥やカエル、トカゲなどの小動物を襲う際にビブが邪魔をして前足をすばやく前に出せない。捕まえるスピードが遅れるので、その隙に獲物は逃げることができる。
狩りがうまくいかないこと以外は行動に大きな支障はなく、猫はビブを常時着けていても普段通りの生活ができるようだ。
このビブは地域の獣医や役所を通じて無料で猫の飼い主に配布されており、少しずつその効果があらわれているようだ。実際に使ってみた飼い主のニナさんは、「猫はあまり気に入ってはいないけど、効果を実感しているわ」と話す。以前は飼い猫のスティンキーが出かけると大抵何かしらの獲物を持って帰ってきたが、ビブを着けるようになってから手ぶらで帰ってくることが増えたそうだ。
ビブには効果があるようだが、猫が外にいる限り、野生動物を追っかけたり捕まえようとしたりする本能的行為を阻止することはできない。ビブを広く普及するのも大事だが、やはり猫を外に出さないことが最も重要だと専門家は話す。
猫が外にでないと野生動物が被害にあわないだけでなく、猫自身が交通事故にあったり病気をもらったりするリスクを減らすことができ、猫の長生きにもつながる。飼い主が「猫を家に閉じ込めたくない」と否定的に考えるのではなく、「猫の健康のために家にとどめておく」とマインドセットをする必要があるかもしれない。