ウクライナにある「White Rock Bear Shelter(ホワイトロック・ベアーシェルター)」というクマの保護施設では、白い毛色が特徴的な高齢のメスのクマが暮らしている。チャドという名前のそのクマは天山ヒグマの珍しい亜種で、野生に残っているのはわずか約1000頭だけと言われている。
チャドは1998年に生まれ、幼い頃からサーカスのクマとして働かされ、サーカスのツアーのため人生のほとんどを車輪の上で過ごした。歳をとって体が思うように動かなくなるとサーカスから追い出され、キエフ郊外の工業地帯にある小さな錆びた檻の中に放置された。そこで7年間の孤独な日々を送り、やっと活動家たちの働きかけで2019年にホワイトロックへやってきた。
チャドは視力が非常に悪く、歯もほとんどないが、ホワイトロックのクマファミリーのスター的存在として好かれている。威厳や美しさとはかけ離れた、年寄りクマの自然体の姿が人々の共感を呼んでいる。とくにチャドが朝起きたときの姿をとらえた動画は、観たものすべてを笑顔にしてくれる。
防空壕のような穴のなかで寝ていたチャドは目を覚まし、ゆっくりと穴から這い出てくる。
「やれやれ….。今日は何日だったかね。寝過ぎたのか寝足りないのか、それすらもわからないわ。朝ごはんの時間、終わってないといいんだけど。ああ〜、まだ眠い!(首を振り振り)やっぱりもう10分寝よ」と言わんばかりに、後退りをしながらお尻から穴のなかへ戻ってしまった。
この動画はSNSで話題となり、多くの人が「まさしく私の朝もこんな感じ。ベッドから出られない」と共感している。
そしてチャドとは関係ないが、動画のなかでチャドの向こう側に映っている茶色いクマが、マイケルジャクソンのムーンウォークをしていると密かに話題になっている。ホワイトロックにはクセが強めな個性的なクマが揃っているようだ。