かつてオウムのエリーが欲しがったのはクラッカーだった。しかし、いま彼女が求めているのはスマホやタブレット越しにオウム仲間と行うZoomミーティングだ。
これは単なる一過性の遊びではなく、エリーの心の健康維持にとってとても大切な習慣になっている。
オウムは知能が高く、6〜7歳レベルのパズル問題を容易に解いてしまう。情緒ゆたかで社会的に複雑な生き物でもあり、飼い主の人間だけでなく鳥同士でのコンパニオンシップ(親交)を求める。しかし複数の鳥を同じケージ内で飼うと、高い確率で病気が伝染して健康を損なうというリスクが伴う。
グラスゴウ大学の研究者イリエナさんは、飼っているオウムのエリーに仲間とビデオ電話をしたいときはベルを鳴らすように教えた。そしてタブレットをオウムの目の前に持ってきて、画面で仲間のオウムたちの一覧を見せ、誰と話したいかをくちばしか舌でタッチして選べるようにした。
同じように合計18羽のオウムを対象に調査が行われ、ビデオ電話がオウムたちの社会的要求を満たすかどうかを調べた。具体的にはビデオ電話システムが使える時間帯にオウムが仲間に何回電話をかけたか、どれくらいの速さでシステムを使ったかという動きを観察することで、どれほどオウムたちがビデオ電話をしたがっているかを調べた。
研究者たちはオウムたちがビデオ電話中に攻撃性といった否定的な行動をするのではないかと心配したが、実際にはスクリーン越しであってもオウムたちは実際に会っているかのような社交的な行動をたくさん示した。ミラーリング行動という相手の動きを真似する、一緒にダンスを踊る、歌うといったしぐさをして楽しんでいた。
この調査結果から、スクリーン越しでもオウム同士の精神的つながりが形成される可能性があると言える。調査が終わったあともオウムたちはビデオ電話をやりたがり、仲良くなったオウムとの交流を続けたがっていたようだ。
もちろんデジタル機器をオウムに使わせるのには注意が必要だが、オウムの孤独を解消するためのツールとして、ビデオ電話に今後注目が集まりそうだ。