カンガルーはのんびりとしたイメージを持つかもしれないが凶暴な一面もある。怒るとすさまじい脚力で人間を押し倒し、大ケガをさせるおそれのある危険な動物だ。
オーストラリアでは、武道を教えている男性が愛犬を救うために川の中でカンガルーと闘った映像がニュースとなった。
ミック・マロニーさんという名前の男性は、3匹の飼い犬を連れて川沿いを散歩していたが、そのうちの一匹「ハチ」がいなくなっているのに気づいた。
川の方に目をやると葦(アシ)の向こう側に巨大なオスのカンガルーが仁王立ちして、ミックさんを睨みつけていた。恐ろしいことに、そのカンガルーは両腕でハチの首をわしづかみにし、まるでハチを人質として捕らえているかのようにミックさんを威嚇し続けた。ハチは溺れないように必死で顔を水面から出し、弱々しく助けを求めていた。
ミックさんは大きな音を立ててカンガルーを怖がらせようとしたがまったく効き目がなかったため、意を決して川に入ってカンガルーと対面した。武道の先生であるミックさんでさえも、その巨大で筋肉ムキムキのカンガルーを前に怯まずにはいられなかった。「その筋肉といい、まるで刑務所から出てきたばかりの極悪男のようだった」とミックさんは振り返る。
ミックさんが「お前の頭を殴るぞ、犬を離せ!」と脅すと、カンガルーはすぐさま仕返しのパンチをし、撮影をしていたミックさんのスマホを川に投げ落とした。
その後、スマホが水没していたため動画には映っていないが、ミックさんはカンガルーと激闘の末、無事にハチを取り戻すことができた。
「カンガルーの頭を平手打ちしたら、ヤツが俺に飛びかかってきて、水の中でちょっとした取っ組み合いをしたんだ。カンガルーが俺を蹴り飛ばそうとしてたから、俺はヤツの顔に水をかけて、その隙にハチと逃げた。逃げる際にもまた蹴ろうとしてきたがなんとか逃げ切った。動物を愛しているからむやみに暴力を振るうようなことはしたくなかった」とミックさんは語る。
動画の終わりにはハチとほかの2匹と帰るシーンが映っているが、ミックさんの手の甲は流血して痛々しい。
彼はハチに向かって「ハチ、タフに見えないね、それでも男かい?」と声をかけ、ほかの2匹には「ハチを助けずにどこにいたんだい?お前は?」と冗談まじりに尋ねた。
ミックさんはこの事件後、人々から「カンガルー相手の柔術(ルー術)でも教えたらどうだ」と言われるそうだが、ミックさんは「絶対にごめんだ」と断る。「カンガルーとの闘いはもう終わりだ。アイツも強かったからね。引き分けってところかな」と苦笑いをした。