チリのプエルト・モントで10月頭に、事故や災害による負傷者に対して最初に応急措置を行うファースト・レスポンダー(緊急対応要員)と医学生たちが集まり、車と自転車の衝突事故の現場を想定した訓練が行われた。
自転車に乗っていた人を演じた役者は地面に仰向けになって倒れ、ケガに苦しんでいるふりをしていた。すると、たまたま現場にいた犬が倒れている人を見て近づいてきた。地面に寝そべっている人を見るなんて、犬にとって初めてだったので興味深かったのだろうか。すぐに犬も訓練の一員となり、仰向けに寝転がって死んだふりをし始めた。
予期せぬ参加者に訓練現場の人々は驚いたが、ファースト・レスポンダーは倒れた人だけでなく、その犬も事故被害者として応急措置をすることにした。訓練は緊迫した雰囲気で行うものだが、お腹を触ってもらって嬉しそうな犬を見て隊員の顔から思わず笑みがこぼれた。
この犬はジャイガンテという名前で特定の飼い主はおらず、地域の人々に食べ物をもらって可愛がられている野良犬のようだ。人の注目を集めるのが大好きで、街でイベントがあるたびにやってくる。今回の医療訓練も多くの人が集まっていたので、きっと血が騒いで参加してしまったのだろう。でもまさか被害者のマネをして死んだふりをするとはだれも想像ができなかった。その演技力とユーモアはオスカー受賞に値するとメディアも称賛している。