
愛猫が適切なサイクルで排便ができているか把握できていますか?
猫との生活の中で、把握すべき生活ルーティンの一つが排せつです。
便秘は放っておくと健康を害してしまう恐れのあるトラブル。
解消するためには原因を正しく理解し、適切な解決方法を見つけることが大切です。
猫の便秘とは?判断基準と放置するリスク

飼い主さんによって、猫の排便の観察の仕方はさまざまでしょう。
- トイレ中に愛猫の様子を観察する
- トイレ掃除の際に排泄物の量などを観察する
- システムトイレを使用してアプリで管理する
など、飼い主さんのライフスタイルによって適した管理方法を取り入れていることが多いでしょう。
ここからは、便秘かどうかの確認の目安や起こり得る症状について解説します。
何日排便がなければ便秘?
人間は毎日の食事と排便が健康のためにも大切とされていますが、猫も同様です。
ただし、加齢や全身状態によって食事の量が異なったり、食事内容で便の回数や量が減ってしまうこともあります。
毎日排便がないことが便秘に直結するわけではなく、便秘といえる日数に明確な数字はありません。
しかし、毎日排便がない場合、腸運動や便のたまり具合を確認することをおすすめします。
便秘が続くとどうなる?注意点やリスク
便秘と聞くと、お腹の違和感や排便のしづらさなどをイメージしますが、便秘が続くと腸運動も緩慢になり、嘔吐や食欲不振などの全身状態の悪化につながり、死に至る危険性もあります。
直腸が太くなり、「憩室(けいしつ)」と呼ばれる部屋状の構造が形成されると、さらに便秘になりやすくなります。
硬い便は排出されづらく強くいきむ必要があり、排便時の血圧上昇や心臓の負担にも。特に心疾患などがある場合は注意が必要です。
便の状態で健康チェックをしよう
便には様々な情報が含まれています。回数や頻度だけでなく状態もチェックする習慣をつけましょう。
猫の便の形状や色、やわらかさで消化器の状態や適した食事なのかが推測できます。
食べ物は、消化器を通過する中で消化・吸収され、栄養分や水分が適切に取り込まれたうえで便として排せつされます。
腸内に留まる時間が長すぎると、過剰に水分が吸収されて硬い便になりがちです。
逆に、通過が早すぎると栄養や水分の吸収が不十分となり、やわらかい便や未消化のニオイが残る便が出やすくなります。
また、食べ物の種類で便の色が変化するほか、腸のどの部位で炎症や出血が起きているかによって、便に混じる血の色も異なります。
猫が便秘になる主な原因

便秘は、違和感や食欲の変化を引き起こすだけでなく、愛猫が快適に日常を過ごせるかどうかにも大きく影響します。どのような生活習慣や体質が便秘の原因となるのか解説します。
水分不足や食事内容
猫はこだわりを持つ子が多く、水の飲み方や器、ごはんの好みなども異なり、性格によっては水分の摂取量が少なくなる場合もあります。
また、野生時代の習性から、水をあまり飲まない傾向が強い個体も少なくありません。
ドライフードなどの食事によって摂取する水分が少ないと、便秘の原因になり得ます。
中高齢になり腎機能の低下が見られる場合は、体内の水分を必要以上に排出してしまうケースも。その場合、脱水傾向に陥るため便秘になる可能性も高まるでしょう。
運動不足や環境の変化・ストレス
腸の動きが鈍くなると食べ物が長く腸内に留まり、水分が過剰に吸収されて便が硬くなり、便秘を招くことがあります。
また、精神的なストレスで排便を我慢すると、同じく便が腸内に長く留まり、硬くなって排出しづらくなります。
猫は環境の変化やトイレの状態などに敏感で、排便を控えてしまうことも。腸の健康を保つには、適度な運動とストレスの少ない環境づくりが大切です。
毛玉の飲み込みや異物の誤食
猫の便秘の原因のひとつが「グルーミング(毛づくろい)」。
毛の量や被毛の性質によって、飲み込んだ毛がうまく排出されず毛玉になることがあります。
通常は吐き出して排出されますが、飲み込んで便と混ざり、大きな塊となって腸を塞いでしまうことも。
特に抜け毛の多い猫や長毛種では、毛玉が便秘の原因になりやすいです。
また、誤って異物を飲み込んでしまい便秘を引き起こすこともあります。
どちらも飼い主さんが日常生活の中で、誤飲防止の環境づくりやこまめなブラッシング、毛玉対策を行うことが効果的です。
加齢や病気の影響
若いころから便秘体質の猫もいますが、年齢を重ねるにつれて便秘が起こりやすくなる場合もあります。
加齢によって消化機能や腸運動が低下したり、持病や脱水によって消化がスムーズにできないことがあるためです。
また、筋力低下や関節の違和感によって排便時にいきむことが難しくなり、便秘を招く場合も。こうした体の変化により、シニア期には便秘が増える傾向があります。
日頃から食事量と排便量のバランスをチェックし、食欲低下などの変化が見られた場合は便秘のサインかもしれません。
猫の便秘を解消する方法【自宅でできるケア】

猫の便秘が続くことで、違和感や食欲不振などの体調変化が見られる場合、飼い主さんができることはないのでしょうか。
もちろん自宅で日常生活を過ごしながら、対策や予防を行うことは可能です。
①水分をしっかりとらせる
便秘の解消や予防には水分摂取は欠かせません。
水分補給が得意でない猫には、ウェットフードを多めに与える、フードをふやかすなど、食事と一緒に自然に水分をとらせるのも効果的です。
また、水飲み場を増やして家のどこでも水を飲めるようにするというのも、移動を好まなくなった中高齢の猫には有意義でしょう。
②食事内容の見直し・サプリメントの活用
適切な排便のために、健康な腸運動や腸内環境を維持することは大切です。
食事内容の見直しや腸に良いとされる成分を積極的に摂取することは、有意義な便秘対策になるでしょう。
消化機能や腸内環境、腸運動は個体差があり、愛猫に適した食事内容にすることが重要です。
食物繊維などの消化に良い栄養素や乳酸菌やオリゴ糖など、腸に良いとされる成分が含まれたフードを選び、サプリメントを取り入れてみましょう。
何を選べばいいのか不安な場合は、かかりつけの獣医師に相談するのがおすすめです。
③軽い運動やマッサージで腸を刺激
全身状態や持病の有無にもよりますが、適度な運動で体を動かすことやマッサージをして腸を刺激することで健康な腸の運動を維持できる可能性が高いです。
猫の状態によって体に負担のかからない運動量や体の動かし方は異なります。心配な場合は必ずかかりつけの先生に確認してみてください。
マッサージは体を温めながら軽く手を当てて、腹部を頭側から肛門に向かってゆっくりと撫でてあげると良いでしょう。
嫌がるようであれば無理にせず、スキンシップの一つとして楽しみながら撫でてくださいね。
動物病院へ相談するタイミングと注意点

排便がないかも…と気づいても、便秘を軽くみてしまい“様子を見る”という選択になる飼い主さんも多いでしょう。
しかし、便秘の背景や程度によっては致命的なトラブルにつながる危険性があり、適切なタイミングで動物病院を受診する必要があります。
2日以上出ない・血便・嘔吐があるときはすぐ受診
体調による食事量の変動も関係しますが、基本的には1日1回の排便が腸の健康を保つうえで重要です。
明確に「どのくらい様子を見てよいか」を数字で示すことは難しいですが、数日間排便がない場合は獣医師に相談して、腸の状態や便のたまり具合を確認してもらいましょう。
触診やレントゲン検査などで、腸内の便の量やごはんがどのように腸を移動しているかを推測できます。
また、便秘に加えて血便や嘔吐が見られる場合は、消化不良や腸炎、閉塞などの可能性があります。
治療が必要なケースが多いため早めの受診を心がけましょう。
浣腸や下剤を自己判断で使わない
動物病院で便秘と診断された場合、浣腸の処置や下剤の処方が一般的です。
人間用にドラッグストアで浣腸や下剤が市販されていますが、絶対に猫に使用してはいけません。
浣腸や下剤によって排便を促すことは、腸内の水分も一緒に排出することになり、脱水を引き起こす危険性があります。
動物病院では、脱水の程度を確認しながら浣腸や下剤を使用したり、必要に応じて水分補給の点滴を組み合わせたりして、猫の体に負担をかけないように処置が行われます。
そのため、家庭で飼い主さんが自己判断で行うことはおすすめできません。
高齢猫や持病がある場合は特に注意
たかが便秘と思いがちですが、便秘がきっかけでさらに全身状態が悪化してしまうことも。
高齢猫の場合、便秘になると腸運動がさらに緩慢になり、食欲不振や吐き戻しによる体力消耗を招くことがあります。これが積み重なると、致命的なダメージにつながるケースも。
また、硬い便を出そうと強くいきむことで心拍数が上がり、心疾患のある猫では発作のリスクもあります。
便秘はさらなるトラブルを招く可能性があるため、様子を見すぎず早めの受診を心がけましょう。
猫の便秘を防ぐために日頃からできること

知らず知らずのうちに、猫が便秘になりやすい環境を作ってしまっている場合もあります。
愛猫の健康管理ために飼い主さんが気をつけることや対策をご紹介します。
こまめな水分補給を意識する
水を飲む習慣があまりない猫にとって、水分補給を促すことは難しいかもしれません。
日常生活の中で工夫をしながら水分補給ができるとよいでしょう。
例えば、以下のような対策が有効です。
- ごはんにウェットフードを加える
- ささみのゆで汁などの風味のついた水分を加える
- さまざまなタイプの飲水器や器を複数箇所に置き、気に入った場所で水が飲める配置にする
- いつでも新鮮な水を飲めるよう循環式の給水器を取り入れる
水分は必ず無味無臭でなくても問題ありません。愛猫の好きな風味を加えることで水を飲む可能性が高まります。
ほかにも、愛猫の好きな飲水器を見つけることが解決の糸口になることもあるでしょう。
バランスの良い食事と食物繊維を取り入れる
腸運動の健康維持に欠かせないものは、猫の消化機能に適したバランスの良い食事です。
口コミが良いフードであっても、必ずしも愛猫の消化機能に適しているとは限りません。
食物繊維や脂質、含有水分量など、愛猫に合ったバランスのフードを選ぶことが大切です。特に食物繊維は、腸の動きを助ける栄養素として重要です。
一方で、猫は肉食動物なのでタンパク質も健康な体を作るうえで欠かせません。
いくつかのごはんを試し、排便の様子や体重変化などを比較してみてください。
重度の便秘を繰り返す場合は、食物繊維を多く含む療法食もあるので、かかりつけの獣医師と相談しながら決めましょう。
適度な運動と遊びで腸を刺激する
便秘予防のためには、消化機能に適した食事も大切ですが、適度な運動や遊びで体や腸を動かすことも必要です。
好奇心や満足感を満たすことで精神的にも安定し、腸運動の改善も見られ、食欲も亢進することが期待できます。
また、飼い主さんとの信頼関係が築かれていることで、猫は安心して生活でき、健康な体のサイクルや機能の維持にもつながります。
キャットステップやキャットウォークなどを活用し、愛猫を満足させてあげられると良いでしょう。
▼おすすめ商品はこちら
にゃんだリング(マグベース)
猫壁/にゃんぺき(LIXIL)
トイレ環境を快適に保つ
猫は繊細な子も多く、小さな変化やこだわりで排せつを我慢してしまうことがあります。
トイレを不衛生にしていたり、排せつ時に大きな音や視線が気になる配置になっていたりすると、猫にとって不適切な環境になってしまうことも。
愛猫が快適に排せつできるよう、トイレの環境を見直すことが大切です。
目隠しができるトイレや安心して使える空間のトイレなど、愛猫に適したトイレを選択してあげましょう。
日常のケアや暮らしの工夫で猫の便秘を予防しよう!
便秘は一見すると軽い日常生活のトラブルのようですが、食欲不振や体力の消耗など大きな問題につながる可能性があります。
日常の習慣を見直すだけで便秘対策や予防につながります。
そして、改善されない場合は早期に動物病院を受診するよう心がけましょう。
致命的なトラブルにならないよう、普段から愛猫の排便の観察やケアを行いながら過ごせると理想的ですね。

獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。
興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。


