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【獣医師監修】猫が瓜実条虫に感染したら?白い粒の正体と治療・予防のポイント

愛猫のうんちやお尻に白い粒を見つけたら…実は寄生虫かもしれません。

お米やミカンの種などに例えられることの多い寄生虫「瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)」をご存じですか?

瓜実条虫は猫の消化管に寄生する平たいヒモ状の寄生虫です。

致命的なトラブルにはつながりにくいですが、肛門付近の違和感や消化器症状を引き起こす危険性もある感染症です。

本記事では、猫が瓜実条虫に感染する原因から症状、治療法、再発防止のための対策まで獣医師である筆者が詳しく解説します。

猫に感染する瓜実条虫とは?

猫に感染する瓜実条虫とは?

瓜実条虫という寄生虫を知っていますか?

虫卵の詰まった片節が瓜の実に似た形をしていることから、「瓜実条虫」と名付けられている寄生虫です。

ノミを媒介して感染することで知られており、瓜実条虫の感染がわかった場合はノミの感染も疑う必要があります

消化管に寄生して、下痢や消化不良、栄養吸収不良などのトラブルにつながる危険性があるため注意が必要です。

一回や少数の寄生で命に関わることはほとんどありませんが、大量寄生や慢性的な感染では全身状態が悪化し、死に至る危険性もあります。

稀に飼い主さんにも感染する場合がある嫌な病気です。

おしりや便に白い米粒状の寄生虫のかけらが出てくることが特徴であり、飼い主さんが見つけて感染に気づくことが多いでしょう。

猫が瓜実条虫に感染する原因

猫が瓜実条虫に感染する原因

寄生虫をもともと持っているはずのない猫が、なぜ瓜実条虫に感染するのでしょうか。

外部寄生虫であるノミの媒介が、瓜実条虫への感染の経路として重要な役割を持ちます。

しかし、外に出ない猫も多くいるはずです。実は外に出ない猫でも感染し得る、思わぬ原因が関係します。

主にノミを介して感染する

瓜実条虫は主にノミを媒介して感染します。そして、媒介する経路が少し特殊です。

瓜実条虫は「片節」と呼ばれる、虫卵が詰まった体の一部を感染した動物の便中から排出します。

まずノミが瓜実条虫の卵を取り込み、体の中で幼虫が成長します。

その後、猫の毛づくろいなどを通してこのノミを口にしてしまうことで、体内に瓜実条虫が入り感染します。

そのため、ノミが活発に活動する時期は特に注意しなければなりません。

気温が高くなる春から秋は活発になるとされていますが、近年は温暖化などで冬でも気温が高い日があるため、通年注意が必要です。

外に出る猫は要注意!室内飼いでも油断禁物

瓜実条虫の感染経路の重要なカギとして、ノミが存在することがわかりました。ノミに接触する機会は多く、その存在はとても身近です。

例えば、外に出る猫、ベランダや庭などに出る猫はノミと接触する機会も多いといえるでしょう。

野良猫や野生動物の通り道になっている場合、よりノミが環境下に存在する可能性があり、摂取してしまうリスクが高まります。

外に出ない猫でも、飼い主さんの衣服にノミを付着させて持ち込んでしまう場合や、同居犬などが散歩から帰宅する際に持ち込んでしまうこともあります。

絶対に接触させないように配慮していても、偶然の脱走で外に出てノミを摂取してしまうという場合もあるでしょう。

万全の対策をとれるよう、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

瓜実条虫に感染した猫の主な症状

瓜実条虫に感染した猫の主な症状

実は身近な感染症である瓜実条虫への感染ですが、感染初期からすぐに気づける症状があるわけではありません。

消化管に寄生する寄生虫ですが、消化器症状が現れるのは、感染が進行したり多数寄生が起こってからであることが多いです。

ではどのようなことに気を付けておけば良いのでしょうか。

初期はほとんど無症状

瓜実条虫は消化管に寄生しますが、消化器症状などの変化は、少数寄生の場合や初期はほとんど無症状であることが一般的です。

飼い主さんも愛猫の変化に気づくことが難しい場合が多いでしょう。

便検査を行う場合も、少量の便を採取して検査を行うため、顕微鏡で見る便の中に必ずしも瓜実条虫の片節が含まれているとは限りません。

簡易の顕微鏡を用いた便検査でも、少数寄生や初期の場合の虫卵や片節の検出できる精度はやや低い場合もあります。

健康診断時は問題なしでも、時間が経過して発覚するケースがあります。

肛門を気にする・下痢・食欲低下など

瓜実条虫の片節は、肛門から排出されます。排出時に違和感を感じ、肛門をなめたり、こすりつける、気にするなどの変化が見られることが多いです。

肛門に付着する瓜実条虫の片節を見つけることもあるでしょう。

寄生が進行し大量寄生になると、下痢や消化吸収不良による体重減少、全身状態の悪化などが見られるようになります。

消化器症状が重度になると命に関わる危険性もあるため、注意が必要です。

ノミ自体やノミの糞を見つけた場合も、瓜実条虫に感染している可能性は高くなるため、検査や診断的治療による駆虫が必要なこともあります。

受診の判断|こんな症状が見られたらすぐ受診!

初期は症状がわかりづらい瓜実条虫の感染ですが、疑わしい場合はすぐに受診をし治療が必要です。

しかし、どのタイミングで受診を検討したらよいのでしょうか。

下痢や体重減少などの消化器症状や全身状態の悪化が見られた場合、他の消化器疾患との鑑別が必要であるため、受診及び検査が必要です。

便中に白い米粒やミカンの種のような白いつぶつぶが混じった場合は、瓜実条虫の片節の可能性が高いでしょう。

その場合は駆虫が必要なので、軟便や消化器症状が見られない場合でもすぐに受診をしましょう。

体の表面にノミの成虫や糞が見つかった場合も、高確率で瓜実条虫の寄生の可能性があるので、検査及び治療が必要です。

猫が瓜実条虫に感染した場合の治療方法

猫が瓜実条虫に感染した場合の治療方法

猫が瓜実条虫に感染したことがわかった場合、投薬による駆虫を行なわなければなりません

愛猫と生活するうえで、飼い主さんの生活にも影響を与え得るため、早急に除去する必要があるでしょう。

どのような治療が必要で、どのくらいの費用が必要なのでしょうか。

駆虫薬での治療が基本

まずは、瓜実条虫の感染の有無を確認して治療へと移行する必要があり、一般的に便検査を行います。

しかし、少数寄生や感染の初期の場合、便中に含まれる片節の数が少ないなどの理由により、通常の便検査では検出が難しいケースも。

そこで、免疫反応を利用した検査も最近では主流になってきました。

経口投与や注射薬で駆虫を行い、併せてノミの駆除や予防を行う治療が一般的です。

単回投与で駆虫が可能な場合もありますが、完全な駆除を目的に、投薬を複数回行う場合もあります

治療費の目安

重症でなければ外科的な処置などもないため、費用が数十万円などの高額になる可能性は低いです。

一般的な便検査や治療薬なども数千円程度であることが多いですが、完全な駆除を行うために継続的な治療が必要になる場合もあります。

一回の治療費は高くないかもしれませんが、完全に駆虫されるまでの費用として数万円など、合算してみたら費用が高くなっている可能性はあるでしょう。

また、初期や少数寄生など便検査では検出しづらい段階で、より精度を上げるために、検査センターに便を提出し、免疫反応を用いた特殊な検査を行うこともあり得ます。

その場合は、1〜2万円程度など少し費用が高くなるかもしれません。

治療方針や費用は動物病院によって差があるため、かかりつけの動物病院に確認することをおすすめします。

猫が瓜実条虫に感染しないための予防方法

猫が瓜実条虫に感染しないための予防方法

身近に存在する瓜実条虫の寄生というトラブルですが、家庭でできる予防方法はあるのでしょうか。

絶対にうちの子は大丈夫という保証はありません。

感染すると消化器への負担や肛門周囲の違和感など、猫の体に負担がかかるトラブルであるため、しっかりと対策をとってあげましょう。

定期的なノミ予防薬の使用

まずは感染の原因ともなり得る、媒介するノミの対策をしましょう。

動物病院で購入可能な、ノミなどの外部寄生虫の薬を使用することをおすすめします。

動物病院で購入可能な薬は、実は予防薬という名の駆虫薬です。

飲むことや皮膚への塗布で吸収され、血中に分布した結果、ノミが吸血すると血中の薬に反応してノミが駆虫されるしくみになっています。

ノミの付着は避けられませんが、ノミ取り首輪や虫よけスプレーなどの予防薬を合わせて使用すると安心です。

外部寄生虫対策の薬には様々なタイプがあります。

例えば、経口投与タイプや滴下タイプ、効果の持続する期間が1か月のものから3か月と持続性のあるものまで様々です。

愛猫の特徴に合わせてストレスになりにくいものを選択してあげましょう。

飼育環境を清潔に保つ

ノミの感染経路は、猫の外出だけではありません。

外出した飼い主さんや、同居する動物が外から付着させて帰ってきて、愛猫の生活する空間に落としたノミが猫の体に付着して感染が成立する場合もあります。

どのタイミングで家庭内にノミが持ち込まれているか、はっきりさせるのは難しいでしょう。

そのため、少しでも可能性を低くできるよう飼育環境を清潔に保つことは大切です。

毛布やクッション、敷物などをこまめに入れ替えたり掃除したりすることや、帰宅後の衣服を脱いでそのまま放置しないことなどが必要です。

ノミを家庭内に持ち込んで、そのまま存在させてしまうことのないよう、清潔に保ちましょう。

定期的に健康チェックをする

瓜実条虫の対策として、定期的な健康チェックは欠かせません。

特にノミが寄生していないかどうかのチェックや、便検査を通じての瓜実条虫の感染の有無のチェックはとても大切です。

健康な猫でも定期的なチェックをしておくと安心です。

年に1〜2回でも十分ですが、今までにノミや瓜実条虫の寄生があった猫や、外に出る機会のある猫、新しく猫を迎えた場合などはもう少しこまめに検査を行った方が安心かもしれません。

病院の検査以外でも、ノミの寄生を意味するノミの糞が体から落ちないか、体にノミがついていないか、体や便に白い粒が付着していないかを家庭でこまめに確認するようにしましょう。

検査を受けるべき他の項目などについて、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

瓜実条虫は早期発見とノミ対策が重要!

瓜実条虫は早期発見とノミ対策が重要!

瓜実条虫への感染は、少数寄生や一度の感染では致命的なトラブルにはなりにくいですが、肛門周囲の違和感や消化器症状など愛猫への負担になり得ます。

また、飼い主さんの生活にも影響する感染症といえるでしょう。

早期に対処できるよう、定期的な健康チェックやノミなどの外部寄生虫の対策を徹底しましょう

感染しないという保証はどんな猫にもありません。

愛猫も感染する可能性があるということを考えながら、飼い主さんや猫の特徴に合った対策をとれると良いですね。

この記事を書いたペットとの暮らしの専門家
葛野 莉奈

    獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。

    興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。





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