
「愛犬が最近寝てばかりいるのは、ただの老化現象?」
「介護の仕方、これで合っているのかな...」
寝たきりのシニア犬と暮らしながら、そんな不安を抱えている飼い主さんは多いでしょう。
寝ている時間が長いのは年齢による体の変化が主な原因ですが、病気や痛みが隠れている場合もあります。
また、介護に正解はなく、その子に合ったやり方や飼い主さん自身の向き合い方が大切です。
この記事では、認定動物看護師の資格をもつ筆者が「愛犬が寝たきりになったときの対応」や「寝たきりになる原因」そして「介護で大切にしたい“心構え”」について詳しく解説します。
犬が寝たきりになったときの判断と対応

ここでは、愛犬が寝たきりになったときの判断と対応についてまとめました。
どんな状態を「寝たきり」と考えればいい?
目安になるのは、次のような状態です。
- 自力で立ち上がれない・歩けない
- 体勢を変えないと同じ姿勢のまま
- 食事や排泄に手助けが必要になってきた
犬はシニア期に入ると、筋力や体力の低下が日常的な動作に影響しやすくなります。
愛犬に上記のような状態が見られるようになってきたら「介護が必要なサイン」です。
急に立てなくなったときはどう対応すればいい?
愛犬が急に立てなくなったとき、老化による自然な変化の場合もあれば、病気や痛みが隠れている場合もあります。
「昨日までは歩いていたのに、急に立てなくなった」
「急に元気がなくなった」
上記のように急な変化があった場合は早急に動物病院に行きましょう。
犬が寝たきりになる主な原因

まず前提として大事なのは、原因を「自己判断しないこと」です。
変化を感じてきたら、愛犬の体が今どういう状態なのかを動物病院で診てもらい相談をしましょう。
ここでは、犬が寝たきりになる主な原因を3つ紹介します。
老化によるもの
シニア期に入ると、筋力の低下・関節の衰え・神経機能の変化などが重なり、自力で立ち上がる・歩くなどの動作が難しくなってきます。
とくに後ろ足から筋力が衰えてくることが多いです。そのため、立ち上がろうとしても踏ん張れず、そのまま横になって過ごす時間が増えていきます。
このような変化は「老化による自然な経過」といえます。
しかし、老化によるものだと思っていた症状の中に別の原因が隠れていることも。
「年齢のせい」と決めつけず、状態に変化が見られた場合は動物病院で相談してみましょう。
病気
犬が寝たきりになる原因として、以下のような何らかの病気が関係していることもあります。
- 椎間板ヘルニア
- 脳神経疾患
- 心臓病
- 腎臓病
これらの病気では、痛みや麻痺、全身のだるさなどによって動くことがつらくなり、そのまま寝ている時間が極端に増える傾向にあります。
急な変化が見られたときや状態が悪化しているように感じる場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
ケガ・一時的な不調
転倒や滑ってしまったことによるケガがきっかけで身体に痛みがあると、動くことを避けて横になったまま過ごす犬も多いです。
また、体調を崩した直後や疲労がたまっているときなどに短期間だけ動きが悪くなるケースもあります。
ケガや一時的な不調の場合は安静にして回復を待ちましょう。
しかし、ケガや不調が長引いている場合や、日に日に動けなくなっている場合は注意が必要です。
「一時的なものだろう」と様子を見すぎず、不安があるときは動物病院を受診しましょう。
寝たきりシニア犬の介護のポイント

ここでは、寝たきりになったシニア犬の介護のポイントをまとめました。
「お手入れのしやすさ」を優先した身だしなみ
寝たきりのシニア犬は、お手入れそのものが大きな負担になります。
「美しく整えること」より「短時間でキレイにして終わらせること」を大切にしましょう。
【シニア犬におすすめのお手入れ例】
- お尻周りの毛は短く整えておく
うんちが毛につくとお手入れに時間を要するため、肛門が丸見えになるくらい広範囲で毛を刈っておくと良い。 - 汚れが付かないよう、しっぽの毛は包帯でふんわりまとめておく
しっぽの毛が汚れにくく、汚れても包帯を取り替えるだけでお手入れを済ませられる。 - お腹・内ももの毛も短めにしておく
おむつの中の毛がおしっこで汚れたり、毛玉ができたりしにくくなる。お手入れの時間・手間削減に効果的。 - 寝たきりでも毎日のブラッシングがおすすめ
ブラッシングは、毛の絡まり予防・皮膚の血行促進の役割がある。無理に身体を起こして徹底的にやる必要はなく、できる範囲で毎日コツコツとやるといい。
ドライシャンプーを活用する
シャンプーは濡らさず洗い流さず使える“ドライシャンプー”を活用するのがいいでしょう。
シニア犬は体温調節が苦手です。お湯で身体を濡らされてドライヤーで乾かすという工程で身体に大きな負担がかかります。

A.P.D.C.の「ウォータレスシャンプー」は筆者の実家にいる18歳の愛犬にも使っている、泡で出てくるドライシャンプーです。
排泄物で被毛が汚れたときに、ウォーターレスシャンプーをつけてしばらく揉み込み拭き取るときれいに汚れが取れます。
また、ミストタイプのドライシャンプーもあります。
シニア犬のお手入れに、おうちに1つドライシャンプーを用意しておくといいでしょう。
ドライシャンプーは保湿成分が含まれているものを選んであげるのがおすすめです。
体位変換は“やりすぎ”注意
褥瘡(床ずれ)の対策として「2時間に1回の体位変換が必要」という話も多いですが、実はそこまで重要視しなくていいともいわれています。
むしろ体位変換はやりすぎると新たな褥瘡を作ったり、ストレスの原因になる可能性も。
褥瘡は「ケアの方法を考える」よりも「そもそも作らないようにする」のが大事です。
体圧分散マットや愛犬が楽に寝ていられるクッション・座布団などを使ってあげましょう。
褥瘡(床ずれ)ができてしまったら
褥瘡は、気を付けていてもできてしまうときがあります。
大切なのは、悪化させないように早めにケアをすることです。
褥瘡ができてしまったら、次のようなケアを意識しましょう。
- 患部に体重がかからないよう、姿勢を調整する
- 体位変換は必要最低限でOK
- クッションやタオルで圧迫をやわらげる
- 汚れや湿り気があれば、やさしく拭き取りしっかり乾かす
- 赤みが強い・ジュクジュクする場合は、早めに動物病院へ相談する
無理に自宅だけで治そうとせず、迷ったら動物病院で相談してみてください。
寝たきりのシニア犬が楽に過ごせる住環境づくり

ここでは、寝たきりのシニア犬が楽に過ごせる住環境のつくり方・整え方について、筆者の体験談を交えて解説します。
愛犬が落ち着いて寝られるクッション・ベッドを使う
クッションやベッドには、体圧が偏りなく分散されるものを選んであげましょう。
筆者の実家にいる18歳の愛犬は、適度なクッション性がある平たい座布団の上でいつも落ち着いて眠っています。
ふかふかのもの、高反発ものなど、どんな場所を心地よいと感じるかは犬によってそれぞれ。
「体圧分散マットが絶対にいい!」というわけではなく、愛犬が落ち着いて寝られるクッションやベッドを選んであげることが大切です。
床材にもやわらかい素材を用いる
体に合うクッションやベッドを使っていても、その下の床材が硬いと負担になりやすいです。
フローリングむき出し状態は避け、やわらかい床材を敷いておくといいでしょう。

「わんにゃんスマイル畳」は、お手入れ簡単でクッション性にも優れた畳です。
水分を吸い込んだり汚れが絡まったりしないサラサラ素材のため、排泄物や食べこぼしも拭き掃除だけできれいになります。
シニア犬に限らず、犬と暮らす全家庭におすすめできる床材です。
静かで安心できる「定位置」をつくる
犬がシニア期に入ると、白内障や老化現象で目が見えにくくなってきたり、広範囲の移動が困難になってきたりします。
そのため、“いつもの場所”となる「定位置」を用意してあげるのがおすすめです。
例えば以下のようなやり方があります。
- 愛犬の行動範囲内のものは基本的に動かさない
- 寝床・水飲み場・トイレ・ごはんを食べる場所などは愛犬の近場に位置しておく
- 人の出入りが激しい場所は避ける
- エアコンの風が直接当たらない場所を選ぶ
「寝たきり」まではいかずとも、多少自力で動ける子の場合はとくに、部屋がいつもと違うレイアウトだと戸惑います。
定位置をつくり、安心して過ごせる環境を整えてあげましょう。
寝たきりのシニア犬と向き合うときの「心構え」

「愛犬がどんどん年を取り、1日のほとんどを寝て過ごしている」
「寝たきりになってしまった」
シニア犬と暮らしていると、そう不安に感じる飼い主さんは多くいるでしょう。
そんなときに大事なのは「介護のやり方」以前に「向き合うときの心構え」です。
いつかは来る“その時”のために、知っておきたいこと。ここでは主に「心構え」について解説します。
「受診するか迷う」なら動物病院に相談
寝たきり=頻繁な通院が必要、というわけではありません。
しかし、次のような変化があれば早急に動物病院に相談をしましょう。
- 痛みが強そう
- 長時間鳴き続ける・落ち着かない
- 意識がもうろうとしている気がする
- 床ずれが悪化してきた(ジュクジュクと膿んできた・ニオイがきついなど)
- 食欲・呼吸・意識状態に変化がある
シニア犬の介護では、“飼い主さんができるだけ後悔を残さず最後まで愛犬と向き合うこと”も大切です。
迷ったときは「どうしたら後悔しないか」を考えるといいでしょう。
完璧を目指さない
介護をしていると、どうしても「これで合っているのかな」「もっとできることがあるんじゃないか」と、自分を責めてしまう傾向にあります。
そう感じるのは愛犬の介護に真剣に向き合っている証拠です。
介護に正解はありません。完璧にならなくてもいいのです。
- 今日は最低限のケアだけにする
- 完璧に整えなくても、穏やかに過ごせていれば良し!とする
- つらいときは誰かに話す・頼る
こういう選択も、愛犬の介護生活の中で大切です。
飼い主さんが無理をしすぎないことが、愛犬にとっても安心につながります。
“あなたがそばにいてくれること自体が何よりの支えである”ということを、どうか忘れないでください。
「看取り」を意識し始めたときに大切な考え方
「看取り」は、シニア犬と暮らす飼い主さんの多くが頭をよぎる言葉でしょう。
看取りを意識し始めたときは何かを急いで決断する必要はなく、まずは今愛犬が少しでも楽に、安心して過ごせているかを見てあげること。
そして、飼い主さん自身が後悔の残らない時間を過ごせているか考えることを大切にしましょう。
- 呼吸は苦しそうではないか
- 体勢はつらくなさそうか
- 触れると落ち着いた反応をするか
- 飼い主さん自身は、愛犬との時間を愛おしく大切に想えているか
- 愛犬に「ありがとう」の気持ちを持てているか
- 家族の間で、愛犬のことについてちゃんと話ができているか
こうした日々の様子を観察すること。そして、飼い主さん自身の心が穏やかであること。とくに下3つは大切です。
「こうしなければいけない」という正解はありません。
そばで声をかけたり、撫でてあげたり、安心できる環境を整えてあげることも立派なケアのひとつです。
「完璧」を目指さず、愛犬との穏やかな後悔のない時間を大切に
シニア犬の介護に正解はありません。
完璧にやろうとして苦しくなると、その切羽詰まった感覚は愛犬にも伝わりますし、何より飼い主さん自身が疲れてしまいます。
「疲れた」という気持ちで介護をしていると、もし最期の時が来たときに「あんなネガティブな気持ちで最期まで向き合ってしまい申し訳なかったな...」と後悔してしまうかもしれません。
できることから少しずつ。周りの人たちを頼りながら、協力しながら。
“愛犬の気持ち”と“飼い主さん自身の気持ち”をまずは何よりも大切にしてあげることが「介護」で最も重要なポイントなのではないでしょうか。
この記事が、飼い主さんの支えや愛犬との愛おしい時間に少しでもつながれば幸いです。

(パピヨン/男の子)






